空蝉チャン

来るの空蝉チャンのネタバレレビュー・内容・結末

来る(2018年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

劇場で2回観て、原作の小説も買って、我慢できずにDVDもTSUTAYAで借りた。
私は悲しい。
恐らく「来る」なんて分かりにくいタイトルのせいで、面白い映画なのに全然売れなかったことが、、、、。

こんなにワクワクするホラーは初めて!
誰かがSNSで「ホラー版シン・ゴジラ」と言っていたが、まさしくその通り。
ここぞと言う時にはBGMに地響きのように低い太鼓がドンドコドンドコ鳴る。
そういう演出はホラー映画ではあまり見ない気がする。
普通怖い方へ演出しようと頑張るからだと思う。
だけれど、本作はホラー映画でありながら爽快なアクション映画のようでもあったから、「シン・ゴジラ」でゴジラに人間が攻撃を仕掛けるときにマリンバの音が暴れたように、実態が何もわからない「あれ」を人間が除霊するときには和太鼓が暴れるのだった。

この映画は幽霊だとか、よく分からない怪奇現象、それを祓うもっとよく分からない自称霊能力者、、、そういうものをひどくかっこよく魅せてくれる。

終盤の、日本各地から名のある霊能力者を人払いをしたマンションに集めて除霊する展開なんて、信じられないほど興奮した。
普通、「これから除霊が始まる!?わぁなんてワクワクするんだろう!」なんてなるか?
なるんだなぁ、これが。
この映画なら。
だってわざわざ住民にはガス漏れが起きたとマンションを退去させて、公園には即席で霊能力者達が除霊に集中できる高台を設置するんだぞ!?
ひとたび鳥が鳴けば怒号のようなお祓いの声が響く。
右を向けば坊さんが念仏を唱え、左を向けば神官が祈っている。
古今東西の霊能力者が流派なんて関係なく、ただただ「あれ」を除霊するために心血を注いでいる。
それほど沢山の人が惜しみなく頑張っているのに、血を吐いてバタバタと倒れていった、、、。

たった1人の幼女のせいで。

さみしいさみしい幼女を生んだのは何が原因なのか?
結局は人間なんだ。
結局何より怖い生き物は人間なんだ。
そういうテーマを引き立てるために、登場人物は全員生きることに不器用だ。
家族への愛は確かなのに承認欲求の方が強いエセ親父、母親のようにはなりたくなかった母親、姉になりたくて自らを傷付けてまで手に入れた力で苦しむ妹、何も失いたくないから何も欲しがらない姉、生まれるはずだった我が子の存在に苦しむ父親、、、、、、。
みんな凄く魅力的だ。
かっこいい、、、かっこいいんだ、、、。
苦しんでいるさまがひどく人間的で、醜くかっこいい。

エンタメとしてこのホラー映画は最高だ。
怖いんだけど、面白いから是非とも観て欲しい。そんな作品だ。
空蝉チャン

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