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あの日のオルガンのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

あの日のオルガン(2019年製作の映画)
3.8
未就学児童を疎開させ53名の命を東京大空襲(3月10日)から守った若い保母さんたちの実話です。

「もう日本には逃げるところがないの。どこに逃げても同じ。気がついたら戦争と15年も一緒だった。戦争がどこまでも追いかけてくる。」

自身の家族を東京大空襲で失いながらも、子どもたちの命を守ることに拠り所を見つけてきた責任感あるカエデ(戸田恵梨香)が力尽きそうになった時の言葉です。

熊谷空襲(降伏の前日)の火は疎開先の蓮田からはすぐ近くに見えました。

若い女性たちが親を説得し、自分たちの手で廃墟を住みかに変え、疎開先の隣人に協力を求め、子どもたちを守っていく姿は、自分も辛いだろうに、我慢の連続で、慈愛に満ちたものでした。

親から離され集団生活などしたことのない幼児たちが、保母さんたちを慕いますが、寂しさや不安を隠せない。

東京大空襲で家族を失った子どもたちを引き取りにきた人の中には、先々の不安が見える人もありました。

責任者のカエデ役の戸田恵梨香は、倒れるまで頑張り、場に緊張感と追い詰められた感を漂わせるのがうまかったです。
三浦透子が緊張感を解く役。
まだ甘えたくて自覚のない役に大原櫻子。
おっとり保母さんに佐久間由衣。
初めての女優が数多く出演していました。

年頃の女性たちが子どもたちを必死に守る姿、それだけで泣きそうになりました。

学童集団疎開は国によって行われましたが、未就学児童の疎開はありませんでした。葛飾と品川の戸越の保育園の先を見越した判断と決意によって助かった命でした。

実話のもつ力と戸田恵梨香の緊張感ある演技がよかったのですが、演出になるのか、人物の立ち位置なのか、カメラの位置が気になって仕方ありませんでした。広角なのに奥行きを出そうとするから、屋外ロケでも舞台っぽく見えてしまったのが残念なところ。

アン・サリーの歌が沁みました。
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