うえびん

芳華-Youth-のうえびんのレビュー・感想・評価

芳華-Youth-(2017年製作の映画)
4.3
中国の一時代を
とある集団で共に過ごした青年たちの物語

冒頭からいきなりの毛沢東肖像画にちょっと驚く。そこからの中国共産党政治部文芸工作団の日常が、青春時代を後からしみじみ思い返した淡く儚い夢のように描かれていて美しい。戦時のシーンはリアルで悲惨だったけれど。

雄大な自然に開放感を感じる。一方、
偏狭な思想に窮屈感を感じる。

隣国の歴史として学んだ文化大革命と呼ばれる史実。その時代のその国で生きた青年たちの実際を垣間見る。

新入りを”同志”と呼ぶ。
文芸工作団の演舞、赤い旗に”沈まぬ赤い太陽”の歌詞。毛沢東逝去(1976年)やベトナム戦争への参戦など、政局に翻弄され巡る彼らの運命。

大変な国で大変な時代を生きたんだなぁ、自分は日本に生まれて幸せだったと思う。だけど、本作で感じた青年たちの一体感、青春ならではの多幸感。これは、強い思想統制の国家の下で共通の目標を持ち得たからなんじゃないかとも思う。

じゃあ、日本で生まれ育った自分に、青春時代の一体感や多幸感が無かったかというと、あったように思うし、強くはないけれど皆で同じレールの上を走っているようなイメージを共有していたようにも思う。

強い思想統制の怖さは、違う思想を許容せず排除すること。恐怖で人が支配されること。”思想改造”と呼ばれ、全国的に知識人の自己改造・変革が行われたという。本作でも間接的に悲劇的に描かれている。おそらく今でも、表現の自由には、かなりの統制がかけられているんだろう。

激動の時代の荒波に揉まれ続けたシャオピンとリウ・フォン。二人が変わらず持ち続けた、信じ続けた”何か”。それが時を経て二人をつないだ。それが政治思想ではなく、その対極にある”何か”だったことは間違いない。
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