シン

芳華-Youth-のシンのレビュー・感想・評価

芳華-Youth-(2017年製作の映画)
3.5
中国の景色に郷愁を感じた。台湾映画でも韓国映画でも感じることができない懐かしさを感じた。色と光の使い方は絶対に中国産で、自分の幼い時の少ない父親との思い出みたいなのが風景として思せた。まじでこれ見なかったら一生思い出さなかっただろうな。

この映画を見て自分の幼い時の記憶と繋がるのはある意味必然かも知れない。身体にも才能にも恵まれた美男美女たちが恋に戦争に追われ、毎日を一生懸命生きる。その末のあの戦争のシーン。いじめっ子にもいじめられっ子にも平等に訪れる戦争は気持ちの上で全員をある意味平等にしてくれたのかも知れない。でもずるいやつはずるいのか…

素晴らしいシーンもたくさんあったし、シンプルで強固なストーリーにたくさんの人が感動するのはわかるけど、両手をあげて喜べない。いじめている人間の恋愛なんか興味がないと思ってしまう。自分の大切な人間をいじめていて、それを知っていた男がなぜその人のことを好きになる。胸糞が悪い。それすらもしょうがないことなのだろうか。結局ヒロインのことを比較的理解していた立場にいたあの記者になった女も、いじめっ子たちの言動に笑っていたのを忘れない。大体、あの男が純愛だったとしてあの近づき方はあり得ない、それは今っぽい価値観なのかも知れないけど、暴力性を感じる。それらに対して自覚的に作っているのかわからなかった。流石に分かってはいるのかな……でも露骨ではない、無自覚さみたいなのも俺は感じたんだよな。そこからノイズで、心が乗っからなかった。

でもこれがある意味伝えたいことだとしたらどうなんだろう。理論をこえて人の感情動くといいたいのか。間違ってはいないと思うし、それを描くのは良いことなようにも思えるが、今の自分は(見た時のコンディションも十分に作用してると思うけど)乗っからなかった。

大体、純真無垢な人間を描く作品で、その人が寂しい結末に終わるのを俺は見たくないんだ。戦争のシーンだって、あんなにヒロイックに描かないでよ。
シン

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