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芳華-Youth-のmaiのレビュー・感想・評価

芳華-Youth-(2017年製作の映画)
4.8
今年のベストムービーに確実に入る映画でした!
とにかく美しい…だけど、美しい青春映画で終わらせず、各々の苦い、青春を超えた人生経験まで入れ込んでしまうのだからなおさら素晴らしい。

主人公はシャオピンとリウ・フォンですが、この映画の語り部であるスイツにも並々ならない想いがあって…いろんな人の恋のベクトルがあちこちへと飛び回りますが、それをドロドロの恋愛関係にせずに、若者たちの「秘め事」のような美しいものに変化させている物語展開は最高でした。
しかし、この物語の核は実は恋愛のみではないんです…むしろ、恋愛面を見せることで青春映画らしさを保っているだけで、本質的なところは「若者たちの人生」なのだと思います。
「善」を率先して行うのに、ちょっとした問題ごとを起こしただけで、だれも見向きもしなくなる…新天地を求めて遥々やってきたのに、思うようにはいかない…。シャオピンもリウ・フォンも一言で言ってしまえば「不憫」なんです。誰よりも善い行いをしても、最後に富を得られるとは限らないし、二人はむしろどんどんと苦しい道を歩むことになります。
でも、その二人が不幸に見えないのは、真に信念を共にする人が見守ってくれているからかもしれません。
それにそれが彼女たちの本質だと言わんばかりに、あくせくと動く彼女たちは生き生きとしてもいて…。
全身火傷の少年に寄り添って涙を流すシャオピンは美しかったし、その少年を最後まで身を張って守る彼女はたくましかったし、無邪気に踊る彼女は無垢で…。リウ・フォンもただただ名誉を求めてではなく、身の回りの人を大事にしているだけに思えるんですよね…戦地に一人、火炎放射を背負って残るなんてできないです。スイツは「英雄」という言葉を使いましたが、彼の神髄には他が犠牲になるくらいなら自分が犠牲になろうくらいの他者への思いやりにあふれているように感じました。だからこそ、彼がディンディンに拒否されたときに、彼女が「失望・裏切り・幻滅」を感じたのだという語りは、それが真実だし理解はできるのだけど、あまりにも苦しい生き方だなと思いました。

スイツが回想という形で、彼女や彼のその時々の心情を推し量るのですが、それが本当に美しい。その芯の通った強さが美しいんです、シャオピンがリウ・フォンを軽視した文工団を見限ったのだっていう表現…彼女の素朴さに隠れた高潔さにハッとさせられました。

戦地のシーンは生々しくって、想像以上でした。
そこで、彼らは心身に傷を負います。
そして、文工団が解散して、時を経ての再会はみなお互いに若さという輝きを失ったからか、一気に老け込んでいました。そんなところまで描けてしまうのだから、青春映画の神髄を見た気がします。
その中でも、シャオピンとリウ・フォンの成熟した感じはほんの数分でわかってしまうのです。

文工団での一幕はどこを切り取っても「美」に溢れていました…色彩鮮やかな布や、彼女たちの身につけている素朴だからこそ美しさが際立つ服…そして若者らしい輝きに笑み。
すごくエネルギッシュでした。まさにポスター通り。
いじめもある意味リアルなんです。
なんだか「仮初め」感があるんですよね…きっと誰かにとっては、自分史上最高の瞬間を刻めた輝きの場所として文工団が存在してると思うのですが、ある人にとっては胸に秘めた想いをずっとそのまま抱えていき、ある人にとっては新天地と意気込んだのも束の間でいじめられた苦々しい思い出のこもった場所で、またある人にとっては「自分」を曝け出した結果追い出された場所でもあり…誰しもが本音を語らずに、若さを集結させたって意味では、文工団は大切な拠り所でもあり、嫌な思い出がこもった場所でもあり…という独特な何かだと思います。
確実に言えるのは、各々にとって若さを費やした特別な場所だってことですよね。
シャオピンも、嫌な場所だったかもしれないけれど、彼女が最後に踊っていた踊りは紛れもなく良い思い出なんです。それはリウ・フォンと踊ったからに他ならないのですが。
そして、リウ・フォンもその文工団の仲間に助けてもらうのです。彼がディンディンの現在の姿を見たときの穏やかな表情…もうあまりにも穏やかなのに、その裏にあるであろう「想い」が消化されていったのを感じました。彼は、スイツの回想通りなら、自分が武勇伝を立てて死ねば、それを讃える歌をディンディンが歌い、自分が忘れられることはない…そこまでの執着を見せていたのです。なにしろ、模範兵の彼が勇気を振り絞ってまで恋い焦がれた人なのですから…そんな強い想いも、いつのまにか消化されていたのです。
ハッピーエンドではないけれど、誰かの人生としては悪くはないものだなと思いました。

そして、2人が寄り添って「その後」が語られた後のエンドロールはあまりにも完璧すぎて、何回でもみたいです。
最高にノスタルジックなエンドロールでした。

中国の歴史や革命の流れを知っていればもっと楽しめたのかなという気はしますが、自分とは違う国の話なのに、ノスタルジーに浸れて、感動もして、共感もしてしまう…本当に凄い映画です。

パンフレットもそのままの勢いで買いました!笑
映画のチラシサイズの紙が十数枚入っていて、その片面が文章・もう片面が全面ポストカードのような仕様になっています。
読み物としては読みにくいのですが笑、順番がバラバラになってしまっても読むのに困らないようにはなってますし、何より出演俳優・女優が大きく乗った特大のポストカードのようで美しい…それらが封筒に入っているってところまで完璧…。
寄せられたコメントも素敵ですし、あの時代のことも大まかに説明してあるので、映画の分からなかった部分を補完するって意味ではバッチリかなと。
100均かなにかでファイルを買って、それに保管しようかなぁとは思いますが…。笑

ついでにサントラもApple Musicでダウンロードしたのですが、これもまた良い。
劇中はそんなに意識してなかったですが、いい意味でノスタルジーを煽ってくるし、何より綺麗な曲が多いです。
エンディングの曲含め、こちらも必聴かなと思います。
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