つるみん

ラスト・ムービースターのつるみんのレビュー・感想・評価

ラスト・ムービースター(2017年製作の映画)
3.9
【Now its time for one last goodbye】

かつては映画界のスーパースターであったが、今では老いぼれ、人から忘れられている状態のヴィック・エドワーズ。そんな彼の元にとある映画祭から一通の招待状が届き、しぶしぶ参加するのだが、そこは騙しに近い、名もない映画祭で…。

良質なロードムービーであった。
ロードムービーという定義は大きく2つの要素で構成されていると思っていて、過去を払拭する部分と、払拭し新しい自分を見つけるという為のもの。
本作では、老ぼれヴィックは比率でいえば前者であり、同行した若女リルには主に後者を当てている。このキャラクター構成により、本作を鑑賞すれば、過去の自分を見つめ直し、未来の自分はどうあるべきかと問うこととなる。

それを『キャノンボール』や『トランザム7000』のバート・レイノルズが演じているのだから大変説得力がある訳であって、また本作が遺作であるというのも何だか〝人生〟といった感じで素晴らしい。

過去の栄光や思い出にしがみ付くのではなく、どこかで終止符を打ち、あるいは心の中に静かに閉まっておく必要性を感じる。ヴィックであれば、功績や妻。リルであれば、ダメ男からの脱出であろう。若干のネタバレになってしまうが、ヴィックは仔犬という新しい命を、リルは新しい恋人をと。どちらも希望あるいは再生への位置付けがシンプルでありながら、かなり好みであった。

A24の中で一番好き。
つるみん

つるみん