「検索結果を変えるために環境を変えろ」と言ったのは東浩紀だが、この映画は、外国でスマホを失くした主人公がたまたま出会った現地人や景色によって自分の世界が広がっていく過程を描いている。スマホで撮った無名YouTuberのクソ面白くもないシンガポール旅行Vlogや数人しか見てないインスタライブやTikTokを思わせるスマホ画面を通してでは自分探しなんて出来ないのだ。ぼやっとした人生はスマホを失くすことで動き出すのだ。っていやそらそうでしょうけど、あのライブ全然楽しそうじゃないしNYで会いましたってすっごく取ってつけたような終わり方だし説教臭いしそんなこと言われなくても分かってるよ。東浩紀の「弱い繋がり」に準じて言えば、帰国した主人公はおそらく英会話やNYの画像を検索しただろうけど、そんなものシンガポールに行かなくてもスマホ失くさなくても誰だって検索するからもっと限定的なたとえばタミル語やハイナンチキンライス料理を勉強するようになったとか、そこにしかない出会いによって人生が変わったという風にすべきだった。
