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ヘレディタリー/継承の裾のネタバレレビュー・内容・結末

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ホラー映画、観るか。みたいになってます。夏なんで。とりあえず一本目。



家族の愛とか絆とか言うけど、所詮は同じ人間じゃないし、他人よりちょっと近い他人なんだから、どうにもならないこともいっぱいあるんだよ。と励まされてるような感じすらして、不思議な安心感さえ覚えそうになりました。それは私自身が、"家族だから"というだけでは乗り越えられなかったたくさんのものを経験している側の人間だからだと思うけど。そうじゃない多くの人からしたら、これは確かにむちゃくちゃ怖い映画だと思います。てか怖かったからな。私も。映像が。それはそう。

家族の中でどうにもならないもの、相互理解以外にもうひとつあって、それが「遺伝」だと思うんですけど、これは目に見えなくても確実に(生物学的に)存在するから、愛とか絆よりより厄介なんだよな〜、みたいなこと、改めて思い知りました。生き方は選べても、遺伝子って選べないから。令和ワードセンスで言うと親ガチャ。
そういう意味で、この映画は「登場人物が周囲の忠告を聞かず危険を冒して霊を怒らせた」とか、「主人公がたまたま立ち寄ったスポットが呪いの館だった」とかじゃなく、本当に、己の中に生まれいずるものだけで宿業を完結させてるの、恐怖の表現として最高すぎるし、同じくらい真摯だなあと思いました。あの家族の中で唯一祖母の遺伝子を持たない父がアッサリ死ぬのも、そういう輪廻から外れた場所で何も知らないまま死んでいいんだよ、というある種の許しのようにも見えて。

いや、マジで、思ったよりどうにもならないんですよ。家族って。愛って結構有限だし、結構奇跡だから。


ミッドサマーを先に観てたんですけど、やっぱり共通して他人(特に家族)のままならなさがすごく丁寧に描かれてて、そこに対してこんなに真剣に向き合ってる映画監督を他に知らないから、アリ・アスター……ええやつ。になりました。

ここまで書いてあれなんですけど、ホラー映画観てこんな感想抱かない方がいいと思います。普通に。それはそう。
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