takanoひねもすのたり

ヘレディタリー/継承のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
3.8
何度目かの再鑑賞

前半から中盤の流れが不穏で良き。

後半は登場人物の加速してくテンションと演出に笑いのツボを押されてしまうので、そういう意味で面白がれる。

全体の組み立てが、絵の構成力から台詞、伏線回収までお見事、ドールハウスな目線からの、上下左右並行のカメラワークとかロジカルに作られてると思う。

『全部あの方のためのお膳立てでした』ってなる結末、そこに至るまでの演出が監督らしい不穏な特色が出てる
ただそれを差し引いたら鉄板オチ。

何回観てもアニー(トニー・コレット)とスティーブ(ガブリエル・バーン)の息子がピーター(アレックス・ウルフ)娘チャーリー(ミリー・シャピロ)という家族構成の違和感、この設定が最初から違和感の種。

長男だけラテン系(or中東orユダヤ系?)祖母父母妹はアングロ・サクソン系、コントラストが強すぎて義理を疑うけど直系設定が謎い。

長女は自閉症と発達障害の傾向、ナッツアレルギー、無断で庭に出たら叱るのに、長男のパーティへは強制して行かせる母親、ちぐはぐ。

スティーブは精神科医、妻の夢遊病を把握していつつ、彼女のドールハウス製作をどうみていたのか、彼女の作品≒箱庭療法的な?
妻の作っていた作品がどれもこれもネガティブな題材でそこもやばい。

長男ピーターのある行動の心理は理解できる、直視したくないその気持ち、分かるよー、しかしその現実逃避の方法と、翌朝の事故の露呈が鬼演出。そして葬式まで時を飛ばした場面転換。めちゃくちゃ落ち着かないのは、相関の心理描写が無い、あって欲しいと思う情報が与えられず最悪の選択を選ぶ人。

そして夜に帰宅した息子を察しつつ娘の存在を確認しない両親も……とにかく何か変なんだよな、この家族。この微妙な違和の積み上げがうまいなあと思う。

あとは、もうあからさまに挙動不審になってく顔芸とスライディング土下座風と昆虫っぽく壁に貼り付くある人物なんかで愉快になれる。

作品自体は好きだけど日本とSNSでの監督の持て囃されようはついてけないなあ……メディアの持ち上げ方とか端から見てると妙に気持ち悪い。監督本人に非はない。