櫻イミト

四人の息子の櫻イミトのレビュー・感想・評価

四人の息子(1928年製作の映画)
3.0
フォード監督がドイツに赴き、ムルナウ監督から指導を受けて制作した一本。トーキー直前のサイレント作品。

ドイツのバイエルンに住むベルンレ夫人は、立派に成長した四人の息子と幸せに暮らしていた。第一次大戦の戦火が近づく中、村に駐屯するドイツ将校に侮辱された三男ヨゼフは自由を求めアメリカへ渡る。やがて戦争は拡大し、長男フランツと次男ヨハンは出征する。。。

第一次世界大戦と第二次世界大戦の中間時期に作られた自主的な対独プロパガンダ映画に見えた。ドイツの家族は不幸になり、アメリカに渡った兄弟は大成功し幸せになる。路頭に迷ったドイツの母を救うのがチョイ役で出演した若き日のジョン・ウエインというのも凄い(ウエインは本作に小道具係として参加していた)。

サイレント期にフォード監督自身が脚本を選んだ唯一の作品であり、思想的にも映像手法的にも、その後の彼のトーキー作品群の原点だと思う。思想的には、強者として寛大な威厳を示すアメリカ大国主義が、臆面なく堂々と打ち出されている(これ以上は言わないでおく)。

映像的には、本作で実践したドイツ表現主義が、監督のモノクロ期の画作りに大きな影響を与えていることがわかる。光と影を意識した部屋の中と外の構図作りは本作で確立したのではないか。また、人の影を使った演出も所々に使われて、絵面だけ観てるとドイツ映画と見間違えるほどだ。シュトロハイムのような軍人や、「最後の人」(1924)のエミール・ヤニングスのような郵便配達人も登場する。

当時のムルナウ監督は「サンライズ」(1927)を撮り終えたばかりだった。同作を観たフォード監督は、今後10年はこれを超える作品は出ないだろうと感嘆したという。
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