デカモタロー

ペンギン・ハイウェイのデカモタローのレビュー・感想・評価

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)
4.7
エウレカ…発見・発明の喜びを表す言葉

スタジオコロリド制作
石田祐康監督
森見登美彦原作
上田誠脚本
音楽:阿部海太郎

ある街が舞台。この街がとても広く豊かで面白い。そして、主人公あおやまくんの頭の中が同じく広く豊かで面白い。これが本作の魅力。ある街で不思議なことが起こる夏の話、というのはよく観てきた。おそらくそれらと差別化されるのは、街もキャラクターもディテールと魅せ方が上手いという点だ。
これこそ、夏休みに子供も大人も楽しめる映画ではないのかね!ペンギン・ハイウェイ!

あおやまくんが謎の核に突き当たるなか熱を出して寝込む夜の場面、妹が泣いてベッドの横に現れる。お母さんが死んじゃう、という。これが今の母親のことではなくて、人がいつか死ぬものだっていうことを考えて悲しくなったというもの。兄であるあおやまくんは優しく教えてあげる。この場面は印象的だった。妹の役割はこれ以外には晩御飯をタイミングを教えるだけなので、おそらく重要。子供ってこういう事考えるのかっていう驚きもありつつ、あおやまくんの対応は本作のラストにも響く。

子供を研究者として認める親。この親子関係が美しく思う。あおやまくんの父親が考えるヒントを何度か伝える場面があり、彼の部屋の壁には研究の原則的な父からの教えを書いた紙が貼られている。大人ってこうあるべきだと思う。お姉さんも、友人達も、君はどう考えるのと訊ねる。普通なら子供はあまりまともな返答はしないだろうが、こういう環境が子供を育てるだろう。学び方を教える。
ハマモトさんの父親は、大事な研究は秘密にしておくべきだといいつつ、娘の研究ノートを見てしまう。この罪への罰がもっと印象的であった方が良かったと思う。父親達研究者はウミに飲まれてしまったわけだけど、しれっと生きてるし助かる。

モノがペンギンに変わるアニメーションの気持ち良さ。メタモルフォーゼの連続にワクワクが止まらない。ペンギンはかわいい。
映像的魅力と言えば、なんと言っても、お姉さんのおっぱい。おそらく本作の開始数秒であおやまくんのお姉さんのおっぱいへの探究心を知ることとなる。これに観客は心を掴まれたに違いない…。お姉さんの家で過ごす場面、疲れて寝てしまったお姉さんのボディラインが見事だった。ラストの展開に、ついにおっぱいに触れることとなるが、これも見事に、泣けて笑えて熱い。動きが良い。

宇多田ヒカルの曲も良い。何歌ってるかは分かんなかったけど。

サウンドトラック阿部海太郎も素晴らしい。ワクワクする曲。

本作が長編デビュー作となる監督の卒業制作「rain town」って話題になってて観たことがあったので驚いた。少し雰囲気に共通点があるところが、またワクワクした。