おーもり

ペンギン・ハイウェイのおーもりのレビュー・感想・評価

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)
4.1
ぺんぎん達とお姉さんと過ごした、とても、とても切ないあの日。。
少年のひと夏の決して忘れられない思い出。ほんと好きだこの作品。

同じSF(少し不思議)映画として、毎年ドラえもん映画が公開される時にも毎回思うんだけど、
夏休みとか、子供たちが劇場に来やすいこの時期にはSFアニメを公開してほしい。
子どもたちには難しくて、その全ては分からないかもしれないけど、科学の面白さや
世界の不思議に興味を持ったり、なにか心が動かされるきっかけになると思うですよね。私もその一人。

アオヤマ君の真面目で生意気な不思議なキャラ。
最初は自信満々でこの子を好きになれるかな?とちょっと疑って見てたけど、もう全然良い子良い子。
彼なりの論理と自信をもって、分からないことは素直に分からないと言い、その生真面目さ正直さも少年らしくて好感度高い。
アオヤマ君の劇中のセリフ
「一日に30分だけおっぱいの事を考えると心が落ち着く」
というのは、この世の核心をついていると思うぞ少年。

ウチダ君のぼんくら感がすごく可愛い。ハタモトさんもクラスメートの大人びた雰囲気も素敵。
アオヤマ君のお父さんの教育方針は見習いたいなぁと思った。
課題やその答えを示すのではなく、自身で見つけた問題に対して答えを導く手助けをしてあげる。
何事も自分で考えさせないと本当に身につかないことを知っている人だ。

そして何よりお姉さん。
蒼井優さんの声がお姉さんの魅力をとても引き上げていると思う。
子供の視点から見ると、お姉さん含め大人たちは普段見えていないところでは一体なにをしているのか想像できない。
アオヤマ君から見えない世界のことは描かれないので、そこがまた神秘的なお姉さんの空気を出している。

ラストはもう、宇多田ヒカルの主題歌「Good Night」の破壊力がすごいのなんのって。
あのセツナイ・ハイウェイな終わりを涙ぐんで通過したのに、あの歌で涙腺決壊しました。歌詞を聞き入ってしまった。

夏休みの身近な範囲での不思議な冒険はワクワクしてとても楽しいかった。
それと同時に、勝手にゾッとしたというか、一抹の不安に思った事がある。
アオヤマ君の住む世界は本当は何なのだろう。
あの世界に現れた「海」やペンギン、ジャバウォック、そしてお姉さん。それらは世界に現れた”バグ”だ。
閉塞的な世界、ループする川。そしてそれに誰も気が付かない不自然さ。
本当にあの町外れの駅から先に世界は存在しているのか・・・。
アオヤマ君は本当に大人になるのか。まさか同じ一年が繰り返したりしないのか・・・と。
あの聡明なアオヤマ君が世界の真実に気がついて、ペンギン号に乗って、
裏返された世界の内側から、外側の存在に対して一発かましてくれる未来をとても応援したい。

パンフレットで監督・キャラデザ・監督助手のお三方の対談が乗ってたけど、
30歳前後の、自分と同世代の新進気鋭のスタッフ達がこんな素敵な作品を生み出したなんて勇気づけられた。
今後も応援しております。負けてらんないなぁ。