架空のかいじゅう

希望の灯りの架空のかいじゅうのレビュー・感想・評価

希望の灯り(2018年製作の映画)
5.0
閉店後のスーパーマーケットに広がる小宇宙。
魚たちが泳ぐ海も、夕焼け空のビーチも、極寒の地も、愛車も、ご馳走も、優雅なクラシックの音色に包まれたダンスホールも、いろんな人間模様も、何もかもがその狭い中にある。
フォークリフトがこんなにムーディーで疾走感ある乗り物だとは。

予告やキービジュアルの雰囲気だけで、この優しく寂しい感触は見逃したくないと感じた。期待通りとてもよかった。
「ありがとうトニ・エルドマン」で娘役を演じたザンドラ・ヒュラーの出演作が今後も楽しみで仕方がない...。若くも熟女でもない、娘だったり人妻だったりガールフレンド?だったり、このいくつもの顔を持つ微妙な年齢層の魅力に打ちのめされっぱなし。
主人公の無口っぷりは最近見た「幸福なラザロ」にも通じる全体通して静かにグッと来る味わいで、じっくりとゆったりと映画的豊かさが滲み出す。
咳が止まらないおばさん、ぬいぐるみ、不法侵入と花束、一つ一つの要素が、暗闇に点在する灯りのようにポツポツと心に残っている。

イヌイットの挨拶、やりたい。

同日見た「僕たちは希望という名の列車に乗った」がベルリンの壁ができる5年前の東ドイツの話で、本作はベルリンの壁崩壊直後の話。