ノルウェー労働党の移民政策を巡る「最後の審判」を題材に、無差別な虐殺が描かれる。登場人物の不合理な行動に最後まで苛つかされるが、それは安全地帯からポップコーン片手に観測する我々の残酷さの顕れだろう。外国人材を酷使する我々も他人事ではない。
最後には、欧州での極右の台頭について「敵」という概念が示唆されるが、本来アクチュアルであってほしくない過激思想が実学じみて見えるのは恐ろしい。ニュージーランドのヘイトクライム主犯がカール・マルテルの銘を犯行道具に刻む今こそ、フォルカー・ヴァイス(長谷川晴生訳)『ドイツの新右翼』読書の重要性は疑いない。