垂直落下式サミング

肉体犯罪海岸 ピラニヤの群れの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.5
一度喰いついたら離れないピラニヤのような不良グループの生態を描いた日活ロマンポルノ。リゾート地でカップルへの集団暴行行為を繰り返すピラニヤ軍団たちの顛末。往年の日本映画らしいアンチブルジョワ&アンチパブリックオーソリティな反骨心がマシマシ。ザッツカウンターカルチャー。
DQNカップルが富裕層たちを狙って襲撃を繰り返しているうちに、政略結婚を強いられている令嬢と接触するうちに三角関係に発展し、男一人と女二人の運命が交差していくところが見物。
その日暮らしだが自由を謳歌する犯罪者と、物質的な豊かさのなかに生きているのに金と権力に縛られている富裕層という対比は、腐るほどみてきたけど、これをエンタメとしてみれる耐用年数は過ぎた気がする。僕らは、盗んだバイクで走り出す系の人たちを受け入れる余裕はなくなった。群れからはぐれた子羊であっても、ちゃんと出るとこ出て償ってください。
草の根のチンピラは暴力に訴え、力ずくで奪い取り、上流のチンピラは権威を笠に着て、契約で支配する。手段とやり口が違うだけで、性根の部分では繋がっている。ピラニヤの群れという副題には、人はどいつもこいつも寄り集まると、他の人間をよってたかって食いものにする生き物だと、そんな意味が込められているように思う。
こういう作品は、ちょっと苦手。ラス・メイヤーの作品群とか、梅宮辰夫の不良番長シリーズとかと同じで、どうしようもない奴らが主役で、特に咎めを受けることもなくやりたい放題しすぎるのは許容できない。
最初らへんの無軌道なピラニヤ集団が、海で遊んでるところが大嫌い。スイカ割り用のスイカであんなに気持ち悪く遊べますかね?
ロマンポルノ映画としても、シーンの繋ぎとか、切り替わりすぎるショットとか、レイプシーンでの女の抵抗しなさとか、いちいち鈍重で巧くない。
ピラニアの水槽に入れられた金魚が、無惨に食い殺される映像を、オープニングのスタッフクレジットに被せてあるのも嫌だった。映画の内容を端的に示す描写なのはわかるんだけどさ、めっちゃ観る気失せる。映画だからって、ほんの楽しみのために生き物の命奪うのは、いい気しませんね。