ひろぱげ

母さんがどんなに僕を嫌いでものひろぱげのレビュー・感想・評価

3.4
歌川たいじさんのエッセイ漫画を実写映画化した作品。両親の不仲、母親からの虐待、育児放棄に近い施設への送致、そして母との間に起きた決定的な事件と17歳での家出など壮絶なエピソードは、実写ならではのリアルさで見る者を辛くしがちであるが、まぜごはんを作る冒頭の雰囲気や、主人公が社会人劇団で知り合う親友キミツのキャラなど、ユーモア&明るく楽しい要素とバランスが取れていて、エンターテインメントとして楽しめる作りとなっている。

主役の太賀くんはじめ、母親役の吉田羊、主人公の心の拠り所となる「ばあちゃん」役の木野花など達者な役者が揃って映画の質を高めてくれていた。
特に太賀くんの、感情をさらけ出した痛々しいまでの演技は素晴らしく、そしてカワイイ。彼のキャラクターあってこそこの映画だとさえ思えた。(子供時代役の小山春朋くんもカワイイ)

原作ではあまり感じなかった、タイジと母親との「似た者同士感」というのも興味深かった。母がタイジを嫌い遠ざけようとしたのは、自分と似ている部分、それも、自身が嫌いな自分の中の要素を息子に見て取ったからなんだと思えた。

親による児童虐待が後を絶たない世の中ではあるが、ばあちゃんのように何があってもその子の味方になってくれる大人が一人でもいると救われるなあという気がする。(病床のばあちゃんとタイジとの「僕は豚じゃない!」のやり取りはやっぱり泣ける)
それは絶対的信頼と、無償の愛なのである。
そしてそれらはあの子供を愛するのに不器用だった母親にも少しではあるがあったのかもしれない。その象徴がまぜごはんだった。
そのままでは自己肯定感が磨り減ってマイナスになっていったであろうタイジが、後にかけがえのない友人達と巡り逢えて彼らを惹きつけられたのも、ばあちゃんが、そして母親が与えた大事な贈り物のひとつだったんじゃないかな。
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