"不親切な映画"
しかしながら、親切だから良い。
とは限らないのが映画の面白い所だ。
アンナの目線で、彼女の日常を
ただただ追っていく。
熟年の夫婦。
ある日、夫が逮捕された。
理由は深くは語られないからこそ、
アンナの目線で出てくる表面的な
事象で判断していくしかない。
しかし、語られているのは
表面的な日常ではない。
語られない彼女の日々にこそ。
語られない彼女の心の奥にこそ。
何かがある。と思わずにはいられない。
それはきっと、夫の逮捕以前から
もしかしたら彼女が心の奥底に
持っていたものかもしれない。
それはきっと、今回こんな事になって
初めて感じる心持ちかもしれない。
彼女の中にわたしはもっとこうして
おけば、夫の罪は止められたかも
しれない。とか自分自身に対する
後悔も感じてしまった。
この映画をほのかな希望の灯火とするか、
燃え尽きる前の微かな灯火とするか。
ラストカットだけでは判断出来ない。
あの列車が向かう先。
彼女の人生はどうなるんだろう。