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博士と狂人のkojikojiのレビュー・感想・評価

博士と狂人(2018年製作の映画)
3.8
No.1546
2023.12.27視聴

 世界最大の英語辞典「オックスフォード英語辞典」の編纂に心血を注ぐ二人の男の物語。原作はサイモン・ウィンテェスターによるノンフィクション。

 辞書編纂という仕事は、確かに言葉という大海原に泳ぐようなものだ。こればっかりは陸地もないのだから、星を見てたどるしかない。この場合の星🌟は何になるのか、思いもつきもしないのだが。そんな大海原に道筋をつけていくのだから、気が遠くなるような作業になるのは当然だ。この映画では、カードにその言葉の時代毎の使われ方の変化を分類するというやり方をしていたが、当然全て手作業。言葉、語源、派生語、使われ方、変形そんな分類をしているようだ。

 この映画を観てすぐに思い出したのは、「船を編む」三浦しをん(2011年)原作の映画。私はこの映画で、言葉を編む話が地味だけれども、実に面白いことを知った。もしかすると、三浦しをんもこの小説を読んで「船を編む」を書くことを思いついたのかもしれない。私が勝手に思ったことだけれど。

 19世紀。マレー(メル・ギブソン)は、独学で言語学博士となる。学士号を持たない異端の学者マレーは、やがてオックフォード大学で英語辞典編纂計画に携わることになる。シェイクスピアの時代からの全ての言語を収録するという困難な計画の中、マレーに資料を送りつける謎の協力者が現れる。
それは、人違いで殺人を犯した狂人ウィリアム(ショーン・ペン)だった。

 メル・ギブソンとショーンペンががっぷり四つの演技で火花を散らす。
この映画の二人の演技はすごいとしか言いようがない。
 特に狂人とされるショーン・ペンは、激しく、知的で、人違いにより罪もない人を殺した罪の意識に潰されそうになる。彼を救ったのが辞書編纂の仕事と殺した相手の妻との出会いなのだが、次第にこの妻を愛するようになり、さらに苦悩していく。
 精神の異常をきたした時の演技は度を超してすごい。アカデミー賞級の熱演なのだが、あまりに凄すぎて選者を尻込みさせてしまったのだろうか。
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