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コールド・スキンの3110136のネタバレレビュー・内容・結末

コールド・スキン(2017年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

手段の目的化系。


本当は《目的》を達成するための方法が《手段》なのですが、いつしか手段が目的になってしまうことがあります。モンスターを追い払うことは生きるための《手段》だったはずが、いつしか自らの生を感じるための《目的》となっていく。

この映画いくつかテーマがあるのかもしれませんが、一番感じたのはコレです。


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ポスターからモンスター系ホラーと思いましたが、うまく分類できませんが、少なくともホラーではないかな。デザインが、意図的なんでしょうが、ミスリードしてますね。単純な《人間VSモンスター》映画を深夜気楽に観ようと思ったのに、ちょっと違いました。いろいろ考えさせられた良い映画でした。

ちょっと脱線しますが、このパターン多いなぁ。実際の作品の内容よりも、意図的に《分かりやすく》《レベルを抑えた》内容に見せる広告。まぁ商売的には仕方ないのでしょうね。このポスターだから私も観たわけで…。配給側を攻めることはできません、観る側にも責任はありますな。

《人 対 半魚人※》という構図ですが、半魚人=悪、というシンプルなものではありません。それぞれが、それぞれを守るために、それぞれの考えのもとに戦っている。
※このレビューでは便宜上《半魚人》と表記しますが、半魚人ではありません。半魚人というと人魚がイメージされますが、この映画では魚類が進化した人間のような生き物です。

知的レベルは人間より劣りますが、猿よりは良さそう。コミュニケーションは言語ではなく、鳴いてします。見た目はポスターに出ている感じ。動きも含めて《ロード・オブ・ザ・リング》のゴラムっぽい。コールド・スキンというタイトルは、この半魚人の肌が冷たいところから来てい(ると思い)ます。

では、
●簡単にあらすじ
フレンド(主人公、名前が出てこない。単に“友(フレンド)”とだけ)は、気象観測員としての任務に付いた。それは北極圏の島で風向きと風量を記録するという単純なもの。ただし、基本的には島に灯台守を除いて住人はおらず、期間も1年間という大変な内容だった。

フレンドは島に着くと観測員用の小屋に向かった。1年分の食糧や身を守るための弾薬、燃料などを運ぶ。前任と交代するはずらしかったが、小屋には誰もいない。テーブルに積もったホコリがしばらく誰も生活していないことが分かる。灯台へ向かうとグルナーという灯台守がいた。グルナーに聞くと、前任はチフスで亡くなったという。

島で過ごす2日目、夜もふけた頃だった。小屋の扉を叩く音がする。それはノックというには激しいものだった。「グルナーか?」と聞いても返事はない。激しくなる音とともに、扉のしたから伸びてきたのは爬虫類のような手だった。フレンドは思い切り踏みつけると、悲鳴とともにその手は引っ込んだ。と同時に小屋を囲まれていることが気配で分かる。フレンドは、床下に身を隠した。そして床の隙間から今までに見たこともない不気味な生き物(以下、半魚人)を目の当たりにする。

3日目の夜、また奴らはやってきた。小屋の守りを固めてはいたが、自分を守るために放った火が小屋を燃やす。なんとか助かったが、小屋で過ごすことは無理そうだ。フレンドはグルナーへ助けを求め、灯台で一緒に生活することになる。驚いたことにグルナーは半魚人1匹(アネリスという名)を飼っていた。グルナーによれば「躾けることができる」という。そして、その日からフレンドは、毎夜やってくる半魚人の大群をグルナーと追い払うことになる。

(中略)

気づくとフレンドは半魚人に囲まれていた。アネリスの姿もある。しかし襲ってくる様子はない。フレンドは半魚人たちが休戦を求めていると感じた。グルナーにそれを伝えるも、グルナーは理解を示さない。それどころか半狂乱となり幼い半魚人を撃ち殺してしまう。グルナーの行為に怒りを感じ殴り合いになる二人。いつしか正気に戻ったグルナーは半魚人の群れの中に身を投じ、その生涯を終えた。

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とこんな感じです。


「怪物と戦うものは 怪物にならぬよう心せよ
深淵を覗けは 深淵も覗き返す」ニーチェ


初めはグルナーも生きる為に、生還する為に半魚人と戦っていたんだと思います。ところがいつしか、グルナーにとって半魚人との戦い自体が《生きること》に変わっていった。そして文明世界にも今さら戻れなくなってしまった。

最後の終わり方は、フレンドも同じ道を辿った、ということなんですかね…。

印象的なシーンは、
①沖に船を見つけたフレンドが助けを呼ぼうとしたときグルナーに阻止されてしまう。「人は必要ない」のグルナーのセリフ。それに対しフレンドは「あんたは人間嫌いの負け犬だ、友が去るのを恐れている。敵を生かし、憎しみにすがっている」

②半魚人の目的が人間の征服じゃないとわかったとき、つまり、今までの戦いの理由が間違っていた事に気付いたとき、取り乱すグルナー。

グルナーももちろん分かってはいたんでしょうね。なのでフレンドから本名(グルナーは実は前任の観測員だった)を呼ばれたとき、正気に戻り半魚人に身を差し出したんだと思います。


●異なる二者が分かり合うことはできるか
今回は人間と半魚人の争い。人間は、自分たちの身を守るために。半魚人は仲間を助けるために、あるいは、自分たちの土地を守るために。

絶対悪がない対立。それぞれが、それぞれの考えのもとに行動する結果、対立してしまう。それぞれの主義主張が同時に成り立つ事は難しい。

人種間の争いなど、まさにそういった事をはらむ問題ですよね(詳しくないので知ったかぶりはしません^^;)。

とはいえ、どこか落とし所を見つける方法があるはず。それには単純な二項対立から脱却し、白黒だけでないグレーを見つける精神力が必要になる。


●その他
やっぱりグルナーとアネリスのセッ○スシーン。これかなりショッキング。なんというか、半魚人ということもそうだし、知能が低いというのもショッキングさを感じる要因か。うまく言語化できません。

《コールド・スキン》というのは邦題でもあり原題でもあるわけですが、なんか意味があるのかな。半魚人の肌が冷たいことには当然紐付いているのでしょうが、それ以外にも意味がありそうな…。
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