KAJI7

ライトハウスのKAJI7のレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
4.3
面白かったです。クールベの絵画みたいな映画でした。

「孤独なとき、人間は真の自分自身を感じる」と、トルストイは言いました。
それはそう。他人という光に当てられた皮膚は影よりも滑らかに目に映えるのです。
本当はみんな何より光を欲しているし、自分と向き合っては悪魔に唆されると知っている。

そうやって光を探して、奪い合って、妥協して、憎んで、殺して…
でもそんなことしても行き着く先には光なんてない。ただただ、お先真っ暗ってやつです。
そうやって分かっているはずなのに、どうしても光に引き寄せられてしまう。
熱源に近づくにつれて、自分の肉がバチバチと焼けてゆく匂い。
そのツンとした恐ろしさは想像できないからです。

巨人プロメテウスはゼウスに逆らって火を略奪して人間に渡しました。

人間は喜びました。文明の発展の礎は火です。それは火を見るよりも明らかなことです。
でも同時に、火は人間に戦争や虐殺をも与えました。
それに怒ったゼウスは、プロメテウスを鎖で繋ぎ、生きたまま彼の内臓を鷲に食わせました。

これが神話のお噺し、遠ざかるあのお囃子のふざけた結末です。

神の怒りに触れたのはプロメテウスか、はたまた人間か。

恐ろしい狂気でした。とても好きですこの映画。
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