ameria

シシリアン・ゴースト・ストーリーのameriaのレビュー・感想・評価

3.9
事実をそのまま伝えるにもあまりにも残酷なのに初恋を絡めることによってもっと胸に残る作品になっていた。手紙がこんなに愛しくなるなんて。本気でひとりで観なきゃよかったって後悔するほどの余韻。寄り添う肩や体温誰かに切実に側にいてほしくなる映画だった。

初恋って残酷って映画はたくさんあるけどこのタイプの残酷さって…『DEEP END』とまた違う頭の打たれ方な感じ。この手の字体やジャケットの作品はあまり観ないんですけど実話が基だということで気になって観ました。

シチリアの小さな村で13歳のルナが思いを寄せていた少年ジュゼッペが突如失踪してしまう。周囲が口をつぐむ中ルナは必死に行方を捜すが…実際の惨い事件とファンタジーを絡めているのに違和感もなくただただ残酷な初恋と現実に何度も涙が溢れたり余韻で頭が重くなる鬱映画でした。気軽にホイッと観る作品ではなかったです…

1996年実際に起きたジュゼッペ事件を基に作られていると知ってそちらを調べてから観たので、キラキラとしたみずみずしいふたりを見ていたらこれから起きる出来事を想像しただけで開始15分で泣けてきた。ルナの存在はフィクションだけどジュゼッペと同様大人の都合に振り回される姿が本当に痛々しくて。いい大人が全然いなくて優しいのはお父さんくらいだけど、お父さんもお母さんに対して色々な面で妥協し諦めて生きている。でもこのお父さんの優しさがなかったら完走するのは無理だったかも〜!ってくらい唯一温もりがある。

懐中電灯でモールス信号もとてもいい。子供のころ向かいの社宅に住む同級生とお互いに姉弟ぐるみで仲が良くて「見える?眩しいよ〜」なんて電話をかけながらカチカチ懐中電灯でマンションのベランダから互いの家や窓、顔、姿を照らす遊びをしてたことを思い出した。今だったら考えられないというか、あの時だって警察呼ばれててもおかしくなかったかもしれないし、、時代なのかなんなのか、周りもよく理解があったなと思う(笑)

あの友達、突き放しても色んなことに理解を置いてくれて一緒になってくれて一生のうちに出逢えるか出逢えないかの最高にいい友達だと思う。ルナが倒れてるのを見つけて手を握ったときにジュゼッペも共に手を握る姿を見たときに驚きながらも理解を示してくれた姿にジーンときた。

何よりジュゼッペを演じた子が馬も似合うし笑顔もスラッとした体型も目もすごく美しいので、この残酷な出来事がよけいに重くのしかかってきた。何度も手紙を読み返すシーン、あまりにもつらい現実にその手紙を一度土に埋めたけど掘り返してキスして空を仰ぐシーン、悲しいんだけど美しい。美しいのにほんとにつらい…

まさかのあのシーン、無音で映し続けて幻想的でもありながらリアルで吐き気を催した。劇場じゃなくてある意味よかった。でも監督のこの事件を、ジュゼッペくんを忘れてはいけないんだって気持ちが強く表れてたと思う。

ドラゴンボールのフィギュアが映ったのがなんだかうれしかった。日本の文化が国境を越えて愛されてるのもうれしいのに、まさか思いがけない映画のなかに登場するなんて。ただそれもとても悲しくて切ないんですけどね。



ジュゼッペくんのこと
忘れないよ……
ameria

ameria