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教誨師のevergla00のネタバレレビュー・内容・結末

教誨師(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

【生々しい迫真の演技】

大半は、一室での教誨師と死刑囚との対話だけで構成されていましたが、回顧録やスピリチュアル的な演出もありました。

囚人達の中には、現実の事件を彷彿とさせる背景を匂わせる者もいて、一般的に「イメージしやすい人物と事件像」を取り扱っていました。それでも会話だけで多くを観客に伝えられるのは、やはり各役者さんの演技力のなせる技だと感服しました。

囚人の受け答えを責めるでもなく、グラビア写真を、はしたないと非難するでもなく、佐伯の「ありがとう」の優しさが響きました。必要とあらば信仰を捨てて(執着しないで)生きなさいというような描写は映画 “Silence” にもありましたし、仏教ですが「金剛経」でも、向こう岸に着いたら仏陀の教えも置いて行けというくだりがあります。高宮との対話で「聖職者失格ですね」と話しますが、理想や綺麗事を並べるだけでなく、高宮の心の穴に寄り添う決意を固めることで、佐伯は教誨師として一段階成長したのだと思います。

本作に登場する職種の人は殺人犯や牧師含めて全員診たことがあるので、次はどんな「パンチ」が来るんだろうという不安はすごくよく分かるし、観ていて患者と話しているような気持ちになりました。特に野口のような作り話を、「相談事」として延々と聞いていたことは何度かあります。自分の口から出てくる空想の世界に興奮している人は、大抵とても孤独なのかと。

あなたがたのうち
だれがわたしのつみをせめうるのか

罪人が罪人を裁く法廷。
名前だけでは伝わらない本質。

病気、事故、犯罪、災害により予期せずして訪れる死もあれば、心の準備期間は与えられるも第三者によって決定される死もある。「必ず来るが、いつ来るか分からない」という点での死の恐怖は、塀の外でも案外似ているのではないかと思いました。
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