ペガッサ

エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へのペガッサのレビュー・感想・評価

3.5
「ジェットコースターで順番待ちをしているときみたいに胃の中でいつも蝶が飛んでる感じ
いつもそうだから降りた時の安心感もない」

この作品を高く評価する人の多くは、エイラのこの言葉に共感できる人だと思う。
YouTube、Facebook、Twitter、Instagram、様々な媒体を通して自己表現がしやすく、理想の自分を演出しやすくなった時代だ。だからこそ、「(わかりやすい)評価がされない自分」が浮き彫りになる時代かもしれない。月並みな言葉だが、いいねが貰えない自分、「リア充」「陽キャ」「パリピ」に溶け込めない自分には価値がないと勘違いしてしまうのだ(これはインターネットによってわかりやすくなっただけで、必ずしも現代ならではの事象とは言えない)。
他者からの評価がそのまま自己を見つめる鏡になってしまうのは辛いことだ。常に「自分は大丈夫か?」とチェックし、仮に自分が無事着地できていても、不安は終わらない。そしてその行為ゆえ更に「みんな」からずれていく自分に焦ってしまう。
そして多くの「みんな」は特に不安も疑問もなく着地することができているから、自分の着地点が分からずもがく人間を「何やってんのアイツ?」と冷淡に見つめる。

ほんとは、万人の正解の着地点なんてないのだろう。
でもそんなの知らないし、すごく怖いよね。

エイラは自分自身の経験と、パパやゲイブとの関係性の中で成長していく。
この映画を観た直後に「私は私らしければいいんだ!」とすぐに自分の中でパラダイムシフトを起こすのは難しいかもしれないけど、この映画はエイラに似た問題で悩んでいる人に蓄積される、ひとつの温かい経験になるのではないだろうか。
ペガッサ

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