dm10forever

ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~のdm10foreverのレビュー・感想・評価

4.0
【歌姫の帰る場所】

先日鑑賞した「バルバラ」に続き『歌姫』シリーズです。
多分世代や好みによっても「歌姫」って違うと思うんですが、僕にとっての歌姫となるとマライアキャリーでもなければ浜崎あゆみでもなくジャニス・ジョプリンとホイットニーヒューストンでした。二人ともタイプは違うけど神から才能を与えられた「gifted」だと思います。

映画はホイットニーの生い立ちから晩年までを知る家族や友人のインタビューをメインに構成されたドキュメントです。そしてそこで彼らはそれまで知られていなかったホイットニーの素顔を赤裸々に語ります。
中には「そんなことまで言っちゃっていいの?」ってことまで(彼女はSEXが大好きだったとか)。

「ニッピ―(家族がつけたニックネーム)」と「歌姫ホイットニーヒューストン」
二つの顔を持つ彼女の抱える苦悩。
特に晩年の彼女についたダーティーなイメージについて語られる証言の中には絶句してしまうものもあった。

華やかな世界、家族、夫、娘、お金、ドラッグ、愛、孤独・・・
いったいどこで歯車が狂ったんだろう・・・。

ドラッグ使用を認め、リハビリ施設にも入ったがお金が底をつき治療中断。
お金の為には「歌う」しかなかった。
しかしその「復活ライブ」は散々なものだった。当時の映像が流れた時は、観ているこっちまで苦しくて涙が出そうだった。
声はガラガラ、体もお世辞にもシャープとは言えない太鼓腹。何とか「オールウエイズラブユー」を歌いきった彼女に浴びせられたのは拍手よりも罵声。実際途中退席した観客も相当数いたらしい・・・。

何故・・・。どうして・・・。

それでも彼女はリハビリを続けクリーンな生活を取り戻していた。
「歌の世界」に戻ることは容易ではなかったが、代わりに「スパークル」という映画で復活を果たす。彼女はこの撮影をいたく気に入り、自分の撮影が終わった後も撮影地を離れたがらなかったという。

「ここには私の居場所と仲間がいるから」

しかし、次の仕事に向けてホテルで準備をしているとき悲劇が起きる。
2012年2月11日
彼女はホテルの浴槽に顔をつけたまま死んだ。一緒にいたスタッフがほんの30分ほど部屋を離れた間の出来事だった・・。
彼女の死因についてオーバードーズ(ドラッグの過剰摂取)という見方が多かったが、決してそうではないのだと言う。彼女は再び華やかな舞台に戻るために努力していたのだ。

「恵まれた家庭」と誰もが羨んだ裏で彼女が抱えたトラウマ。母シシーに対する反面教師。
幼少期に受けた性的虐待。しかも犯人はいとこの女性だった。
彼女はインタビューで「嫌いなことは?」と聞かれ、こう答えている
「児童虐待よ」

彼女は最期まで「ホイットニーヒューストン」を演じ続けた。本当の彼女は家族を愛する「ニッピ―」だった。

あの美しい歌声と素敵な笑顔を失ったのは、世界にとっても大きな損失であると思う。
だけど、どこかで常に破滅が隣り合わせであったかのような危うさも感じる。
だからこそ魅力的だったと言えるのかもしれない。

でもやっぱり・・・改めてこの作品を観て失ったものの大きさを実感した。

久しぶりに「ボディガード」観ようかな。
dm10forever

dm10forever