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告白小説、その結末のKinaponzのネタバレレビュー・内容・結末

告白小説、その結末(2017年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます



見事にしてやられました。
先入観なしに観ていただきたい作品です。

観終わった後に、
観た者同士で考えを纏めたくなる一本。


⬇にネタバレ考察がありますので、
差し支えないと云う方はご覧下さい。




『ファイト・クラブ』の女性版、
 と云う表現がレビューで散見されていて、

 それはつまり、

デルフィーヌ (エマニュエル•セニエ) が、実生活上で
エル (エヴァ•グリーン) と云う存在を生み出して
彼女に追い詰められていき

 ゆき着くところまで往ってしまった経験を
 小説にまとめ上げて上梓した、
 
と云うもので、それは尤もであり妥当だと思います。


 しかしながら筆者は、

小説のもとになったデルフィーヌの実体験、
つまり作品を書き上げる前に
彼女の身に実際に起こった出来事を
映像として描き出したのではなく、

 すべては、小説の内容そのもの、
 頭で考えて想像し作り上げた小説の世界が
 映像に置き換えられて描かれたと受け止めました。


小説になる前の実体験を描写したものと考えるか
 或いは既に出来上がった小説の作品世界を
        映像化したと見做すか、

 このどちらを採るかによって

デルフィーヌと云う作家像は大きく変わってきます。


 それを象徴しているのが
 冒頭とラストの新刊発売のサイン会の模様で

 冒頭のデルフィーヌは疲弊し困憊しており、
 ベストセラー作家の華々しさはみられません。

かたやラストシーンで
 サイン会に臨んでいるデルフィーヌは

 一点の迷いなく微塵の葛藤もなく、
 ひたすらふてぶてしくしたたかな
 貫禄たっぷりの大作家振りです。

 この二様の人物像で、
 二つのタイプを巧みに描き分けるあたりが
 ロマン・ポランスキー監督ならではと
 感嘆しきりでした。


ともあれデルフィーヌと云う作家は
もともと後者のような作家である、と考える方が

 筆者には魅惑的に映ります。

 自分探しや自己実現に悪戦苦闘して
 悶々とするタイプではなく、

 自己が確立されて、
 総てを統べる力を持ったカリスマとして、
 神の視座で映画を観客に読ませる
 凄腕の持ち主であると。


作品中デルフィーヌが書き上げた小説は
実話に基づいていると謳ってはいるものの

小説そのものは
あくまでフィクションと宣伝されていることから、

 自身をネタにしてエルを創出し、
 そのやりとりを構想した作品と考えれば

一流作家の面目躍如を果たして
余りあると云わざるを得ません。

大御所の傑作に一本取られる爽快感は
格別でもあります。


前者から後者の境地に到達したとみるか
もとから後者で前者を構想したとみるか

 本作をご覧になった方のご意見を
 是非とも伺いたいところです。
 
 いずれにしても、
 デルフィーヌの不敵な面魂は、一見の価値ありです。

 またエルの狂気を潜ませた華々しい存在もまた然り。

 再読必至です。
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