宿泊したホテルの従業員の男に大金を渡す代わりに結婚を申し込んだエミリーという女。承諾を得た彼女はその後簡易結婚式を行う判事をメッタ刺しにした・・！という様々なギミックで観客を楽しませたウィリアム・キャッスル監督がヒッチコック監督の傑作「サイコ」に影響を受けて作ったと言われるサスペンス。

今となっては普通ですが判事刺殺は時代を考えれば血の量多めで序盤からショッキング。エミリーはある裕福な家庭の病気で言葉を発せない＆車椅子生活のかつての召使で老婆ヘルガの看護を任されており、この老婆に対しても二人きりの時は平静を装いつつも殺意が見え隠れし不気味で、この家庭の長女ミリアムが営む花屋もメチャクチャに散らかし、そこに有る（エミリーのボーイフレンドでもある）長男ウォーレンの写真もなぜか傷つける有様。

ここまで書いても意味不明かもしれませんが、エミリーだけでなくウォーレンのどこか違和感ある雰囲気含め全てが明らかになる終盤はやはり「サイコ」の影響大ながらなるほどなと思うもので、階段に設置した昇降機から車椅子のヘルガがゆっくりと降りてくる様は彼女の顔を隠す暗闇も相俟って不気味でその直後起きる出来事もお化け屋敷的演出ながら驚いてしまいました。

このハイライトとなる終盤直前には心臓の鼓動の音が聴こえる中時計の針が映される「フライト・ブレイク」なる時間が設けられ、怖くて観れない方は退場してください（退場したい当時の観客は入場料返金可）とのアナウンスが。観る側を「覚悟させる」演出故にその後の驚きが半減する印象さえ有りますが、これもキャッスル監督らしい遊び心。

特典には公開当時のプレミアイベント映像も収録され、キャッスル監督が「サイコより良い！」と感想を述べる観客にインタビューしたり「知り合いにはネタバレ禁止ですよ！」とアピールする様子も。日本では未ソフト化&未配信ながら多くの人に観てもらいたい一作。

謎の美女エミリーがホテルへと滞在しに訪れる。彼女は周囲の人々を巻き込み、奇妙な行動を取り始める。ウィリアム・キャッスル監督作。サスペンス・ホラーな物語であり、彼女の行動一つ一つが奇妙で、様々な出来事が終盤で集まってくる要素はサスペンスとして出来が良く、先の展開を予想させない面白さがある。本作での娯楽のギミックとして、本作の衝撃の結末の恐怖を観る前に退場した者は、入場料は返金される｢フライトブレイク｣が斬新。60年代作ながら、結末の衝撃は確立しており、伏線も回収されており上手い展開になってます。

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サスペンスとして普通にしっかりしててウケる

@ 京都みなみ会館
「カナザワ映画祭2018 ギミックの帝王 ウィリアムキャッスル」
フライトブレイク上映