しゅんまつもと

21世紀の女の子のしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

21世紀の女の子(2018年製作の映画)
4.2
すこし、作品とは別の話をします。
「なぜ映画を見るんですか?」と聞かれたらあなたはすっと答えられますか?
自分は「まぁ好きなもんだからね」とかそんなざっくりしたことしか言えないけど、約2時間の言ってしまえばただの映像を見るのに、1800円払って、それを月に4本くらい観て、年間50本くらい観て、好きなだけでそうまでするのか、とちょっと自問する。ときもある。

何の話かというと、この「21世紀の女の子」を観てその答えが確認できた気がしたのです。それは、この映画の中に答えがあったとかそういうわけではなく、元から自分の中にあったものというか。
多分、スクリーンの中に、ただの映像の中に、自分を探してるんじゃないでしょうか。
行ったこともない国の知らない人が作った映画の中に「この気持ち知ってる」とか「これは自分だ」って思えることがあると安心する。自分じゃなくてもいい。「こうだったかもしれない自分」とか「あのときのだれか」とかを見つけることもできる。
好きな映画ってそうやって出来ていく気がする。

いい加減に話を作品に戻します。
この映画は「自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること」をテーマに21世紀の女の子のためにこそつくられた映画だ。それは揺るぎない。
ただ、もちろんその「21世紀の女の子」は本当の女の子には限らないのだと思う。暗い映画館の中でスクリーンのなかに自分や誰かを必死に探すわたしたちに向けた映画なのだと思った。
この映画の作り手たちもかつてそうした出会いがきっとあって、脈々とそれを受け継ごうとしてるのだと思った。そんな企画というか、映画は最高だ。

長い。内容について。
8分15本の短編は、長編を撮ったことのある監督からこれが初という監督もいるので、もちろんクオリティには差がある。
でもそれは映画的な技術というよりはテーマへの切り込み方の差のような気がした。
LGBTの描き方に既視感のあるものが多いし、短編だからかもしれないけどけっこう後ろ向きだなぁと思ってしまうものが多かった。これは自分が男だからなのかな。

「誰かを好きになること」とか、もっと言えば「自分を好きになること」が前提としてあって、そこに関係として男女や女性同士や男性同士の恋が生まれていくのかなぁと思う。とても単純な話。
それを感じたのが、『愛はどこにも消えない』『セフレとセックスレス』『out of fashion』『君のシーツ』『回転てん子とどりーむ母ちゃん』でした。

山戸結希の『離ればなれの花々へ』は圧倒的。正直言ってレベルの違いをまざまざと感じさせられた。映画の圧が違う。なんというか異常。
ただ、15本の短編どれも全力で投げてくるので終盤はへとへとになってたから実質ラストの山戸結希の1本でぶちのめされたのもあるかもしれない。