MasaichiYaguchi

ちいさな英雄 カニとタマゴと透明人間のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.7
「メアリと魔女の花」のスタジオポノックが、新たに送り出す短編アニメプロジェクト「ポノック短編劇場」の第1弾である本作は、米林宏昌監督の「カニーニとカニーノ」、百瀬義行監督の「サムライエッグ」、山下明彦監督の「透明人間」という3つの短編で構成されたオムニバスアニメ。
モチーフやテーマ、作風も夫々違うが、共通してアニメの表現領域を広げようと挑戦しているように感じられる。
「カニーニとカニーノ」では水に対する表現において、そして「サムライエッグ」では色鉛筆やクレヨンで描いたようなタッチに、そして「透明人間」ではタイトルが表すように主人公の透明感や浮遊感の表現において、夫々が新たな技術や技法でアプローチしている。
ただ本作はアニメの新たな技術や技法を見せるのが目的ではなく、スタジオジブリ時代から培ってきたものを、僅か1作品15分前後の上映時間に込めている。
それは〝いのち〟の尊さということ。
この〝いのち〟を巡って3つの短編に登場する主人公たちは夫々の〝かたち〟で戦っている。
個人的には社会派の寓話「透明人間」で描かれた切なさ、そして優しさが心に沁みた。
本作は今年4月に亡くなった高畑勲さんに「感謝」を捧げているが、今後、スタジオポノックが監督の遺志を継いでどのような作品を発表していくのか期待したい。