めちゃくちゃ良くて、今年の邦画ベスト級だった!
裏のまたその裏をかくという筋書きそのものが面白いんだけど、何より映像・編集テンポ・役者陣の演技・音楽、全ての要素が絶妙に絡み合って映画的魅力を高めてたのが素晴らしく、吉田大八監督の底力を感じた。
大手出版社の文芸誌とカルチャー誌に新旧の価値観対立を象徴させて、それぞれやり手のトップが戦略を仕掛け合うスリリングな展開に笑いを挟んでくるバランスが絶妙。大泉洋の何を考えてるか分からない飄々としたキャラがピッタリで、彼は作品によってカッコ良さが鼻に付くこともあるけど本作は丁度良かったね。出版記念パーティーで「枯葉」をフランス語で歌い出すいかがわしさ満点の國村隼もセクシーと気持ち悪さのギリギリのバランスを保ってたし、松岡茉優が「桐島」以来の吉田監督作出演で、圧倒的な演技力をひさびさに見せつけられた。
街の小さな書店が世知辛い世の中で僅かに残された古き良き心のオアシスとして描かれてて、それがただのノスタルジーに過ぎないのか、Amazonに代表されるネットビジネスの潮流とどう折り合いをつけるかという、一種の経営論として描かれてたのが印象的。
思えばドリンク演出が際立ってて、コーヒーをうっかりこぼす冒頭から、ワイン、シャンパンを経て、コーヒーを床に叩きつける終盤に繋がるんだね。