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騙し絵の牙のCinemanのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
3.0
『騙し絵の牙』
吉田大八監督
2021年公開 日本

鑑賞日 2023年5月18日 Netflix

出版不況の続くなか、
大手出版社の社長が急死した。
出版社立て直しのために奇策を打って出る編集長。
急逝した社長の創り上げた伝統を守る編集長。
次期社長をめぐっての権力闘争に拍車がかかった。

【Story】
大手出版社薫風社の社長・伊庭喜之助が急死した。
息子の伊庭惟高(中村倫也)を次期社長に推す常務の宮藤和生(佐野史郎)とやり手の専務東松龍司(佐藤浩市)との派閥争いに拍車がかかった。

伝統ある文芸誌「小説薫風」に配属された新人編集者高野恵(松岡菜優)は新人賞応募原稿の中に突出した才能を持つ矢代聖(宮沢氷魚)を見出す。しかし会社の伝統を重んじる編集長の江波百合子(木村佳乃)を始め他の編集者も自社のカラーに合わないと却下されてしまう。

売上低迷のため月刊誌から季刊になるので恵は人員整理で販売管理部へ移動を命じられた。
落ち込んでいる恵は「俺のところに来ないか、人が足りないんだ」とカルチャー・マガジン「トリニティ」編集長の速水輝(大泉洋)に誘われる。
速水は他の出版社から移籍して「トリニティ」てこ入れを任されている。

「小説の連載やってみないか」という言葉を聞いて恵は「トリニティ」編集部に移動することを決めた。

「トリニティ」の編集会議で速水は斬新なアイデアを編集者たちに投げかけるがみんなフットワークが重い。

速水は高野が泥酔して落とした矢代聖の原稿を読み才能を見抜いて矢代の新連載企画を打ち出し、
ガン・マニアで密かにペンネームでファン雑誌に小説を書いている人気モデル・城島咲(池田エライザ)に連載小説の執筆をもちかけ、
大物作家二階堂大作(國村隼)を言いくるめてマンガの原作を書かせることも決めた。

雑誌宣伝のために速水が仕組んだ矢代と咲との熱愛報道などで「トリニティ」は世間の注目を浴びる。

社長に就任した東松は大手外資系ファンドと手を組み、薫風社独自の物流ルート創設を始動することを決める。

ある晩、咲はストーカーに襲撃され隠し持っていた自作の銃を発砲して逮捕される。
東松は会社のイメージを守るため咲が表紙を飾り咲の小説の掲載された「トリニティ」新装刊号の内容差し替えを決める。
しかし速水は優れた才能をスキャンダルごときで潰すべきではない。しかも咲は正当防衛で多くのファンがついているのだからと新装刊号の発行を強行した。
結果、売れ行きは好調で重版までかかる。

恵は数年前に薫風舎で小説を発売しその後姿を消した大物作家神座詠一(リリー・フランキー)に興味を持ち、
倉庫で神座の原稿を見つけた。
神座は原稿を書きなおすことが嫌いで校正者からの修正依頼も拒むことで有名だった。しかし、最後の作品だけは何十回も改稿している。
あまりにも時間がかかりすぎるので薫風社は改稿中の作品を神座に無断で出版してしまった。
小説は大ヒットしたが神座は失踪してしまった。
恵は会社の倉庫で神座が改稿を重ねた原稿を見つけすべて読みこみ内容から推測して神座の居場所を突き止めることができた。

さて、

自作銃でストーカーを傷つけた人気モデル城島咲は?

PR作戦に駆り出されることに不満を持った新人作家矢代聖は?

新社長となった東松の物流革命の快進撃は?

速水雑誌リニューアル売上倍増計画の次の手は?

神座の居場所を突き止めた恵は?


このあと物語は急転直下して思わぬ方向へと向かいます。

【Trivia & Topics】
*出版社あるある物語。
『ハケンアニメ』がアニメ業界の内側を描いたように本作は現代出版社あるある物語です。

*速水編集長。
この企画は大泉洋と親しい編集者が原作者塩田武士に企画を持ち込みました。塩田が4年かけて大泉と出版社を徹底的に取材して速水編集長というキャラクターを創り上げます。
つまり本作で描かれていた速水編集長が好みそうな手口から始まった作品と言えます。
ただしタイトルの「騙し絵の牙」というのが分かりにくいのですが。

*キャスティング。
最初から主人公にあてがきされた大泉洋は当たり前ですが、木村佳乃、佐藤浩市、佐野史郎、宮沢氷魚、塚本晋也、リリー・フランキーなども見事に役にハマっていました。
池田エライザが一番素敵でしたが。

【5 star rating】
☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:超お勧めです。
☆☆☆☆:お勧めです。
☆☆☆:楽しめます。
☆☆:駄目でした。
☆:途中下車しました。
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