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若おかみは小学生!のtouchのレビュー・感想・評価

若おかみは小学生!(2018年製作の映画)
4.4
"春の湯は全ての者を受け入れます"
* * *
「ナメてた子供向けアニメが傑作だった」の最高峰。
きめ細やかな配慮が随所に散りばめられた、所謂”おもてなしの精神”の極地。
今年一番のアニメ映画ともいえる、文句なしの出来栄えでした。
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両親を亡くして祖母の温泉旅館に引き取られた主人公:おっこは、ひょんなことから
旅館の若おかみを目指すことになる。
温泉宿に住みつく幽霊や旅館を訪れるお客様との交流の中で、両親を失った過去や
若おかみとしての責務、覚悟と向き合いながら主人公が成長していく、という実はかなり骨太なストーリー。
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監督は『茄子 アンダルシアの夏』の監督、スタジオシブリで『風立ちぬ』の作画監督などを務めた高坂希太郎
脚本は『猫の恩返し』や『聲の形』、『けいおん!』シリーズを手がける超売れっ子脚本家の吉田玲子
この二人が名を連ねている時点でもう、極上の泣ける人間ドラマは約束されたも同然なのですが
作画や音響といった技術スタッフもぬかりなく、数々の名作アニメを支えてきた名スタッフがしっかりと脇を固めます。
まさに国民的アニメ映画“ジブリイズム”ここにありといった鉄壁の布陣。
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まず特筆すべきは、作画の美しさでしょう。
手の込んだ細やかな山々の自然描写など
ジブリで培われた背景作画は天下一品。
料理のシズル感もまた瑞々しく、作品の質を下支えしています。
これだけで観る価値があったな、と思いました。
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そしてなんといっても脚本が素晴らしい。
説教臭くない絶妙なバランスで語られる職業観と死生観
きちんと子供向けでありながら決して手抜きではなく、その真摯な作りに感心しました。
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「接客」の本質は客に相対して一方的にサービスを提供するものではなく「客に接する」こと
つまり、相手の立場に寄り添って共に最善の道を探すことである
これは仕事に限らず、人生においても非常に重要なことだと気付かされます。
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オムニバス形式に展開するおっこの現在・未来・過去を象徴する各エピソードは、最後には一同に会して感動的なクライマックスを迎えます。
この緻密な構成が本当に見事でした。
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絵柄で子供向けの作品だと決めつけて、高をくくってはいけない
と改めて痛感した大傑作です。
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