女性を見下す独身男性のダミアンは、ある日頭を打ったことをきっかけに女が牛耳る世界で女性作家のアシスタントをすることに…
といったあらすじ。
男も女も観てほしい。
男女平等や、女性の不利な立場が何度も理論で語られても一時の〝風潮〟として流されてしまいがちですが、ここでは実際に立場をひっくり返した世界が展開され、その違和感を突き付けてくれる映画です。
女性はソファーでスポーツ観戦に夢中。その傍で男性が溜息をつきながら食事の後片付けをする。
会社の重役はほとんど女性。
ただ街を歩いているだけで女性から口笛を吹かれ、店で1人でゆっくりしようと飲み物を飲もうにも女性に絡まれる。
極め付けには街のいたるところに男性モデルのほぼほぼヌードの看板。男性が娯楽として消耗される世界。
独身で猫と生活していたダミアンは父親に「いい歳なのにまだ独身なんて…」と結婚を急かされる。
「そんなの俺の勝手だろ!!!」という反論も全てブーメランだったのが面白い。
女も男もその自分の人生を誰に何か言われる筋合いは無い。
ダミアンが元の世界で女性にしてきたことが、この世界では全て自分の身に返ってくる。
男社会の習慣が染み付いたダミアンの視点から女社会を覗くことができます。
この作品を観終わって、「男で良かった」「女の世界なんて最低だ」程度の感想で終わる方は恐らくそれまでの感受性。
だって未だ女性にとってはその最悪の世界の真っ只中なのに。
女性に優しくしろだとか男性はもっとわきまえろとかLGBTについて理解しろだとか、小手先の押し付けでは無い今作。
大切なのは、相手を性別で扱うのではなく、「人として接する」ということではないかと感じました。人として失礼ではないか、人として尊重するという考え方があれば、バーでいきなり顔を近づけて執拗に絡んだりできないはず。人には自由が保障されているのだから。
最後にもう一度疑問を投げかけるようなとても粋なラストでした。