Machiko

バーニング 劇場版のMachikoのレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
5.0
原作未読。煙草が少しずつ灰に化していくように、または夕日が少しずつ地平線に沈んでいくように、不穏な予感がじわじわと映画全体に侵食していくのが堪らない。それになんと言っても映像がいい。村上春樹原作作品ということを忘れさせる韓国の田舎の土着的な背景もそうだし、もちろん大麻を吸って踊るシーンの空の色の凄まじさは言わずもがな。ベンの家の洒脱ですっきりしているんだけど死角が多くてちょっと怖いところとかも、照明の使い方が上手くてハラハラさせられた。特に私が痺れたのは、ベンの車を包む炎を、ジョンスの車のガラス越しにのみ映したところで、あれは探せど探せど見つからない燃やされた(らしい)ビニールハウスと対比になっているんだろうし、あとはなんか分からんがダフネ・デュ・モーリア「レベッカ」のラスト3行を思い起こさせるものがあり。以下引用。

"目の前にマンダレーへの道が延びている。月は出ていない。頭上の空は墨を流したような漆黒だ。なのに地平線の空は暗くない。鮮血を落としたような紅に染まっている。そして海からの潮風に乗って、灰が飛んできた。"

……この、燃え上がる炎を直接バーンと描くんじゃなく、窓ガラス越しとか空の明るさとか飛んでくる灰を使ってワンクッション置く手法(?)がすごく好み。村上春樹は苦手な方なのだが、原作も読んでみたい。
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