ギボン三世

ピータールー マンチェスターの悲劇/ピータールーの虐殺のギボン三世のレビュー・感想・評価

5.0
これまた行きそびれた作品。プライム視聴するも、果たして圧倒された。

19世紀イギリスのある事件を淡々と描き、進行していく。時代の言説や様子が面白いなと歴史的な視点で見ていくが、途中であることに気がつく。各々の立場の視点を丁寧に描いているが、全く交差することがないのだ。だから、互いに別次元の存在に捉えている。この感覚には戦慄した。だから、現代の感覚で見たら恐ろしいが、全く問題がないように事態が処理されていく。これが後に新聞、ガーディアンを生み出したことを知らなければ何ひとつ救いない物語に見えてしまうだろう。

コロナ危機で吹き出した情勢下で見たタイミングも地味に絡んだかも知れない。統治する側の論理とされる側の感覚のズレ、は今日でも簡単には良くも悪くも埋められない。この作品は、それを見事に描いている。そのインパクトたるや、玄人向けで万人受けしないかも知れないが、傑作であろう。

丁寧に主張や群像を描いたところ、最初は長いなと感じたが、虐殺のシーンで救いようがない感覚を一気に高めさた。2度目に見た時、改めて階級や意識の断絶にぞっとするものを感じた。

最後の統治する側の会話と、ラストの家族シーンは今日でもあり得る図式である。
ギボン三世

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