パレスチナとイスラエルの間の壁に謎のグラフィティアーティスト・バンクシーによって描かれた“ロバと兵士”。
それらを始めとした、壁から切り取られ売買されるアート作品を様々な立場から追ったドキュメンタリー作品。
最近、展覧会のテレビCMをよく見かけたり、漫画『左利きのエレン』でも扱われたのをきっかけにバンクシーというアーティストに興味を持って本作を鑑賞。
世の中における“アートとはなにか?”を問いかけるドキュメンタリー作品でした。
アートに込められたメッセージに共感し作家や作品を支持する人々と危険視する政治。
アートを売りさばきお金を儲けようとするバイヤーたち。
それらの存在価値を認め保存しようとする人たち。
ただの迷惑な落書きだと捉える家主。
作品のメッセージを解釈し憤る人達。
様々な立場や角度から“アート”の本質を捉えようするものの、特にバンクシーにおいてそこに作家本人の意思はほとんど表れていない。
ただそこにあるアートを、見た人それぞれがそれぞれの思いや価値観で捉え行動するだけ。
もしかしたらアートはそこに存在するというだけで、“本質”なんてないのかも。
もしくは、人によって“本質”は無限に存在するのかも。
ただ、一人の作家、一つの作品にこれだけ多くの人々があらゆる形で動かされ、こうしてドキュメンタリー作品まで作られているのを見ると、やっぱりアートにはそれだけの力があるのだと思うし、これらの現象そのものがバンクシーの狙いなんじゃないかとさえ思えてきます。