せりな

幸福なラザロのせりなのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
3.5
寓話的でもあり現代的でもある稀有な作品。

ラザロは、自分の境遇を不幸だとか幸福だとか意識はしていなくて求められれば与える存在のような気がした。
ラザロの存在は何なのか、見る人に委ねられているけど極限的にまで欲を持たない存在は、他の人間たちと対照的に描かれていたと思う。
小作人が禁止されてからも、小作人を持ち続けていいた侯爵夫人の事件は、実際のできごとなんだけど、侯爵夫人が小作人を搾取すれば、小作人たちはラザロを搾取するという侯爵夫人のセリフが人間の業の深さを表していた。
このシーン以外にも立場の弱い人間に対する搾取をはっきりと描いていて、監督の社会批判的な眼差しと、寓話的なストーリーとのバランスが秀逸だった。
ラザロ役のアドリアーノ・タルディオーノは1000以上のオーディションから選ばれただけあって、神秘的な雰囲気と曇りのない瞳がラザロという存在をみごとに表現していたと思う。

狼が象徴的に使われていたけど、狼によってラザロは存在していたのかな?ラザロのように真っ直ぐに人を信じられる心を忘れないでいたい。
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