えいこ

幸福なラザロのえいこのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
4.6
おとぎ話のような不思議な感覚の作品。
中世の話かと思いきや、現代社会から遮断されて搾取され続けている村の話。タバコ農園で侯爵夫人から搾取される小作人たちが、口数も少なく純朴なラザロを搾取する。ラザロは、自身を働き者と呼ぶだけで、搾取されている自覚などなしに、ただ求められるまま素直に働く。まっすぐなラザロの瞳は何も色を持たず、相対するものは、自らの姿をそこに見出すがゆえに目をそらしたり、ラザロを追いやったりする。
前半はタンクレディとの絡みにハラハラし、後半は都会での生活に目が離せない。
アントニアが行方のわからなかったラザロを聖人のように迎えてくれたことにほっとし、少しずつ家族に笑顔が増えていく様子は沁みる。タンクレディのことを思うラザロが切なく、ラストは現代社会の虚しさを思い知らされる。

狼とラザロのシーン、教会から音楽が追いかけてくるシーンはおとぎ話を超えて神話のよう。一度見ただけでは取りこぼしているメッセージが、再観賞すればきっと深まり、さらに好きになる映画。
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