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ブラック・クランズマンのJIZEのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
3.8
1979年のコロラド州を舞台にそこで初の黒人刑事となった男が仲間の白人警官と手を組み"白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)"へ潜入捜査する約9ヶ月間の極秘作戦を描いたコメディ犯罪映画‼︎笑えるユーモアと笑えない現実が同時に押し寄せて来る形容し難いセンシティブな映画。極秘で配される潜入任務というハードボイルド活劇をナイスな皮肉たっぷりの台詞の応酬で魅せつつも笑えない恐怖の現実を締めで映し出す。元々KKKの深淵部をあまり知らない状態で観たためちょっとした言葉尻に浮かび上がる台詞のニュアンスに前半は特に置いてかれる箇所もなくはなかったがほぼ後半では抑圧的なその雰囲気を全回収するような明暗の構成が取られているため比較的に文芸映画の社会派ドキュメンタリに着地しなかったのは好感が持てる。そもそも監督が黒笑映画の巨匠スパイク・リーで人種問題に一石を投じ続ける彼ならではの手垢が笑いと恐怖を混在させて至る所に張り巡らされている。白人警官を演じたアダム・ドライバーでもいい按配でKKKの一味に成り果て手に汗握る立場で捜査線上の動向を見守るキャラとして見所だった。見た目の堂々とした立ち振る舞いと仲間内でジョークを飛ばして戯け合う緩急も振り返れば良かったように思えた。本編内で主演ジョン・デヴィッド・ワシントン演じる主人公ロンが電話でコロラドスプリングス支部の担当者と度々接触してヘイト用語を並べ立て語尾を強めたりイントネーションを変えたりする定型化されたくだりが個人的に観てて笑ったし深刻な題材ゆえ人種問題を揶揄させたようなコメディ映画としても機能してる点は素直に圧倒される映画に仕上がっていた。

→総評(KKK潜入作戦にみる人種差別の深刻な事情)。
総じて史実をベースにしつつも現代の出来事に痛烈な批判を定めていて娯楽作品であるいっぽうで社会風刺が効いた胸焼けするほどの濃い映画でした。制作にジョーダン・ピールが関わっていて『ゲット・アウト(2017年)』で魅せたような苛烈かつ痛快なしっぺ返しがブラック&ホワイトパワーの両言い分を維持しつつも描かれている。まさにスパイクリー節炸裂で誤操作させたような監督の癖が遺憾無く発揮されている箇所も全編でだいぶあるが事実前提ゆえソウルフルに震え上がる一品に仕上がったのではないか。それこそ映画の冒頭で時間を遡るようにポーリガード博士が登場してユダヤ陰謀論を唱えフリップというユダヤ人の目を通して反ユダヤ主義を浮き彫りにしてたり終幕で実際のインサート映像を交えてトランプ演説を抜粋してる一幕など現実のエグさを露わにさせてる構成ではスパイク・リー自身が根深き人種問題に対してセルフアンサーのようなカタチで問いに答えているようにも感じる。ぶっちゃけ云えば前半の会話劇のくだりやフリップが潜入作戦を引き受ける経緯などもう何回か観たくなる一度観ただけでは頭が錯綜し続けてぜんぶは理解できなかった。作品の難点はゆいいつロンとフリップのバディ感かつ距離感の縮めかたがザツに感じてしまいもう少し『トレーニング デイ(2001年)』でのホークとデンゼルみたく古典的なアプローチで捜査以外でもやりとりする日常の光景をサイド的に観たかった印象もある。あと終盤の小型爆弾のくだりも黒人警官ロンがレイプ犯と見間違え住宅街の路上で取り押さえられる感じも非常に深刻な場面を活写していたように思えました。というよう第91回アカデミー賞脚色賞を受賞していて事実柄ピリピリしている題材ではあるがKKKの実態や黒人と白人警官が協力して極秘作戦に身を投じる男の中の激アツハードボイルド映画としても力強くソウルフルな快作だった。
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