つかれぐま

ブラック・クランズマンのつかれぐまのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
4.0
4/6_TOHO新宿#11

スパイクリーの自省

本作の入口は「国民の創生」がKKKを再興させてしまった過去。出口がそのKKKにも支持されるアメリカファーストなあの人。

映画界がどれだけ彼を罵倒しようと、この大統領誕生の責任の一因が、映画自身にもあるという痛烈な皮肉。フィクションが持つ危険性を示し断罪するだけでなく、「怒れる人」スパイクリー自身も映画界の一員として自省する作品。

その入口と出口をブリッジする役割の本編は、エンタメとして圧倒的に面白い。アホ白人の描写は痛快だし、画面の隅々にまでスパイクリーの怒りが満ちている緊張感もいい。しかし、この映画の力こそが大衆を熱狂させミスリードすることがあるのだよ。という警鐘がテーマなのではないか。

序盤のクワメトウーレの演説は凄い迫力でおもわず引き込まれる。一見すると本編に無関係なので、スパイクリー自身のアジテーションか、と揶揄する向きもあるようだが、これはこうした時代にあっても、自分の頭で善悪を判断し行動を選択していった(結果暴力を使わない)ロンとフリップを描くために必要な導入だったと思う。あれが、終盤でロンがデュークと写真を撮ろうとする行動に効いてきたかな。

「面白いけど最初と最後が余計」と言われている本作だが、私はむしろこの構造によって、本作が濫造される反トランプ映画の数段上のレベルに到達していると思う。

蛇足:
デンゼル・ワシントンの息子(似てない)や
スティーブ・ブシェミの弟(似てる)よりも、
フェリックス役の人がサイモン・ペッグに似ているな、と思ったが全くの他人だった。