つかれぐまさんの映画レビュー・感想・評価

つかれぐま

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アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

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アカデミー脚色賞に納得。
白人が期待する「黒人エンタメ」は、白人の免罪符と優越感のために作られている。これが実に腑に落ちて、胸がすく思い。意識高い"WOKE"な皆さまの行動原理ってまさにこれじゃん。こ
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セッション(2014年製作の映画)

5.0

24/3/11@イオン調布❾

不穏を煽る編集テンポ。漆黒のスタジオ。そこに君臨する悪魔・フレッチャーが登場。僅かに開始10分で早々に狂気の世界への扉が開く。

編集テンポにまずやられた
予定調和より
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テルマ&ルイーズ 4K(1991年製作の映画)

4.5

24/3/6@UPLINK吉祥寺❷

【逃げない二人の潔さ】

かつてアメリカ映画の王道だった西部劇とニューシネマ。これをイギリス人監督の視点で蘇らせるのだが、主人公は女性二人。

『テルマ&ルイーズ
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きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)

-

『夜明けのすべて』で三宅唱監督に全幅の信頼を寄せたので、未見だった本作を遅まきながら。美しい夜の街で遊んで遊んで(たまにバイト)という、若い男女3人のモラトリアム。

原作の概要を調べてみて驚いたのが
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.0

24/3/1@UPLINK吉祥寺❸

「苦しみはもう現実で十分というか、わざわざお金を払って時間を使ってまで『こんな苦しみが世間にはあります』で終わるものはいち観客としてはあんまり見たくない。その先の
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.5

24/2/28@UPLINK吉祥寺❸

ある不審死を「解剖」して客観的事実を見つけようとしたが、浮き上がったのは主観的考察のみという話。夫婦や親子という当事者の主観100%の領域に他人が土足で踏み込ん
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ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)

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「墜落ではない着水だ」

旅客機のエンジンが故障。
管制塔は空港へ戻ることを指示するも、機長のとっさの判断で川に不時着水した実話ベース

本来なら乗客乗員の命が物語の軸になるところだが、あまりに有名な
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蜘蛛巣城(1957年製作の映画)

-

その器ではない人が
その位置についた悲劇

霧のかかるシーンが多いせいか、どこかぼやっとしたイメージを持っていた本作だが、リマスター版を観て驚く。凄く綺麗でシャープになっているじゃないか。台詞の聞き取
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梟ーフクロウー(2022年製作の映画)

3.5

24/2/21@UPLINK吉祥寺❷

闇の中でこそ見えるもの🦉
生きていくには見て見ぬ振りをしなければならない。そんな社会派テーマにできそうな話だが、決してそれらを前景化させず「みんな大好き」ジャン
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生きる(1952年製作の映画)

-

あらすじを読む限りでは、正直古臭い印象が否めない。
ところが見事な4幕構成で、黒澤明はこの話をただの美談に終わらせない。最終4幕目の構成の妙。これが本作を傑作たらしめているので、初見の方は途中眠くても
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.0

24/2/14@UPLINK吉祥寺❹

目をとじて浮かべる記憶や想像。映画も「虚構」という意味では同じ類かもしれない。『ミツバチのささやき』で始まったキャリアを円環して閉じる集大成。

良くも悪くも「
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エル・スール(1982年製作の映画)

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【父と娘の蜜月、その終り】

スペインの政治的分断を創作のエンジンにしつつ、決してそれを前景化させることなく、あくまで一家族の物語として映画を綴る。『ミツバチのささやき』から通じるビクトル・エリセの作
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.5

24/2/1@新宿ピカデリー❽

「自分の力で幸せになるの」

ベラが序盤の衝撃シーンで「ある発見」をするが、その時の台詞がテーマかも。その方法を探し求めたベラの冒険。「あそこ」からスタートした彼女が
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ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)

3.0

24/1/30@ルシネマ渋谷宮下❼

ポール・シュレイダーは映画評論家としての著作内で、商業映画とアート映画(映画祭や美術館向け)を隔てる要素について言及。ちょうどその境目ギリギリに立っているのがタル
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ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!(2023年製作の映画)

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タートルズには暑苦しいマッチョなイメージを持っていたが、本作は程よいチューニング。原題が"Teenage・・"で始まる本作は良きティーンエイジ映画であり、良きニューヨーク映画。

「ティーンエイジ感」
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カード・カウンター(2021年製作の映画)

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スコセッシの大作の影で、
盟友ポール・シュレイダーも「アメリカの自省」を渋い渋い佳作に。

映画後半まで気付かなかったのだが、主人公の行動原理は「赦しを得ること」だったのだろう。ラスベガスのカジノに行
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カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

3.5

24/1/24@UPLINK吉祥寺❹

ヤクザ経験者がよく「人たらしの極意」を語っているが、本作の綾野剛を観るとさもありなん。もの凄い「色気」で、これは人の心を掴むだろうなと説得力十分。

真面目な父
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レッド・ロケット(2021年製作の映画)

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史上最低レベルのダメ男の話で、この主人公が好きになる観客はいないだろう。
だがこの映画、それでも不思議に面白い。共感しなくとも面白い映画はできることを証明し、むしろ「正しさ」では決して到達できない境地
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インファナル・アフェア(2002年製作の映画)

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タイトル:無限道!

なんてカッコいい。
漢字は世界最高の文字だな。

本作のハリウッドリメイク『ディパーテッド』に比べて、展開がまあ早い早い。雑さはあるが、テンポの良さを優先したのだろう。これはこれ
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オアシス 4K レストア(2002年製作の映画)

4.5

24/1/16@下高井戸シネマ

今世紀に入って韓国映画が傑作を連発しているのは、欧米や日本が作らないような題材を意欲的に取り上げる「後発国の戦略」が奏功しているからだろう。2002年W杯の熱狂の裏で
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RUN/ラン(2020年製作の映画)

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【ジャンル映画の矜持】

アメリカ映画お馴染みの「子離れできない親の話」を悠然と越えていった。トニ・コレットに負けない凄い形相の毒母と(現実に)車椅子ユーザーの娘。この二人芝居で密室劇を持たせる力量。
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レザボア・ドッグス デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

4.0

24/1/10@Wシネクイント

【誰がエディを撃ったのか】

情と理。映画はどちらで観るのが正解か?そんな問題提起を仕掛けてくるタランティーノのデビュー作。

集められた6人の男たち。
雇い主のジョ
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Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)

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異食症という心の病をホラー仕立てにしたジャンル映画かな?と想像していたが、もっと普遍的な「自立」についての話だった。

画鋲を吞み込んだりするのは、観客(特に男性)に主人公と同じ「痛み」をわからせるた
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Pearl パール(2022年製作の映画)

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『X』の前日譚。
キルカウントとスラッシャー度は抑えめで「A24らしさ」をより前面に出したアートホラーの趣。自分はこちらのほうが好きだ。

『X』から引き続き「映画についての映画」でありながら、映画(
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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2017年製作の映画)

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道具立てに凝ってはいるが、要するに「家族の誰かが死ぬことになり、その決定権が父親に委ねられる」という悪夢。普通なら、母親が犠牲になるか、いっそ全員で自決するかだが・・・なんとも胸糞な結末だ。

この一
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ダウン・バイ・ロー(1986年製作の映画)

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獄中で出会ったザックとジャック。ドラッグとアルコール中毒の二人は、禁断症状が出始めケンカが絶えない。そこにもう一人陽気なイタリア人(ほぼ英語できない)が加わって・・。ロベルト・ベニーニが演じたこの男が>>続きを読む

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

4.0

23/12/27@UPLINK吉祥寺❶

嬉しい公開拡大でいそいそと観に行くも、翌日から高熱にうなされレビューが遅れた。まさか哭倉村の呪い・・。

今年の日本映画は時勢を反映してか、太平洋戦争前後を描
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お早よう(1959年製作の映画)

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小津安二郎のカラー2作目。
戦争や家制度の残滓を捉えた白黒時代とは変わり、カラーと凝りに凝った構図で描かれるのは新しい時代の息吹。

登場するのは3世代。
小津と同年代の笠智衆、杉村春子たち。無邪気な
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市子(2023年製作の映画)

4.0

23/12/20@UPLINK吉祥寺❶

No time to cry.

日本映画の感動作とは異なる文法。ポン・ジュノら韓国映画のそれに近いかも。気がづけば思わぬ別ジャンルに連れて行かれ「どういう気
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ナポレオン(2023年製作の映画)

3.5

23/12/13@TOHO新宿❼

「英雄」を笑え。

波乱にとんだナポレオンの生涯をほぼ全て見せてくれた。合戦シーンも多く、シネスコ映えする大サービス。そんな惜しげない大作なのに、なぜか物足りない不
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善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)

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冷戦期の東ドイツ。
秘密警察の主人公が、反体制派の劇作家と女優のカップルを盗聴する。彼らの暮らしを聴き続ける内に、冷酷無比と思われた主人公の心が溶けていく。

正しいと信じ続けた「こちら」ではなく「あ
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ほつれる(2023年製作の映画)

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ほぼ全シーンに主演の門脇麦がいながら、彼女の内面には決して入っていかない不思議な作品だった。欧州映画のような手触り。

それでも彼女と世界の関わり方を演出で見せていく。冒頭のグランピングは「お手軽な」
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ツィゴイネルワイゼン 4K デジタル完全修復版(1980年製作の映画)

4.0

23/12/1@ユーロスペース❶

時が止まった静かな劇場で
珍しいスタンダード画角。
異世界から生還したような不思議な感覚。昨夜は悪夢にうなされた「初めての鈴木清順」

中砂という無頼漢は、結局「文
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ビフォア・ミッドナイト(2013年製作の映画)

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【〇〇があれば大丈夫】

やはりと言うべきか、既に結婚25年の自分には 3作中最も本作が刺さった。公式コピーの「本物の愛にたどり着く」という感じじゃないけど、なぜか救われた思いに。

自分事で恥ずかし
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ビフォア・サンセット(2004年製作の映画)

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【30代は混沌の中】

ジェシーはあの夜のことを本に書き、わざわざフランスで取材を受ける。そしてセリーヌも本を読み、彼に逢いに行く。両者が願った計画的再会だが、9年の歳月がこの話を単純にはしてくれない
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ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(1995年製作の映画)

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【20代は無限大∞】

切ない「刹那」。
若いっていいなと心から。
監督のリンクレイターと俳優二人の年齢差は10才。この年齢差が本作を程よくチューニングしている。青臭く哲学を語る若者を、暖かく見守る視
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