りめんばーみー

存在のない子供たちのりめんばーみーのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
5.0
『存在のない子供たち』再掲

一度書いたが、2回観に行ったため、削除して改めて書く。

【是枝監督はどう思うのだろう?】
この作品を観て誰もが思うのが、是枝監督の『誰も知らない』や『万引き家族』だろう。是枝監督のテーマは「家族」であり、特に『誰も知らない』は監督の暖かな気持ちが画像になった映画史に残る作品である。
だけども『存在のない子供たち』を観ると、是枝監督の作品は「物語」の域を出ない作品、リアルではない作品と感じてしまう。
是枝作品を決して否定してるのではなく、そう思わせるほど『存在のない子供たち』はリアルだ。

【ゼインとヨナス】
そのリアルさは、やはり役者の実感、実体験からくるものなのだろう。
ゼインは、すでに海外に難民として暮らしているが、その前はあのレバノンで暮らす一少年でしかなかった。
設定の年齢も実際年齢も12歳(13歳)で、12歳であの身長とあの体型(体重)は、乳児や幼少期に栄養を摂取できなかったことを明らかに示す。
そう、ゼインは実際に過酷な状況を体感し、生き抜いてきた。
だからこそ、画の力が全く違う。ゼインの存在によって圧倒的な存在感、現実感がこの映画に与えられる。

そして、ヨナスの愛らしさ。幼子のそのままを映画に取り込んだ技法は素晴らしい。
ゼイン一人では『シティ・オブ・ゴッド』のように悲惨・残虐のオンパレードだけで食傷気味な作品になっただろう。
ゼインの愛らしさが、観客に安堵と感情移入を与え、より映画へ引き込まれるようになっている。

【演出】
大人たちの無責任感(無責任にならざるおえない国家システム)の設定や演出も見事。
特に裁判での妹の死についての告白などは、画像で示さず想像させることで、その異常さを観客に分からせる演出になっている。
少女と結婚できるさせる伝統や宗教、文化的な背景をことさら糾弾するのではなく、想像させることに徹したこの演出は実に功を奏している。



全編を通し観客を一切誘導せずに、そのままを見せるからこそ、他の作品には無い強いメッセージ性を持った作品に仕上がっている。

この作品は映画史に確実に残る。
もし、そうでないなら映画業界など解体してしまった方がよい。
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