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存在のない子供たちのmina10のレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.5
貧民街に産まれ、身分証がないことであらゆる可能性を奪われてしまう「存在しない」彼ら。
ポスターにもあった両親を訴える理由「僕を産んだ罪で」をはじめ、裁判のシーンでのゼインのひとつひとつの台詞が心に刺さりました。
様々な事柄を割り切れなくて、情が深くて優しいゼイン。美徳とされるそれらを捨てられないことが余計に彼を苦しめているのだと思うと、ただただいたたまれなくて。
何より切なかったのは途中のシーン。あんなに嫌だったことを、彼自身がやらないと生きていけないという事実。こうして貧困や犯罪は連鎖するのか…とどこか冷静に思いながら、同時に『生きる』という我々からするとただそれだけの事が、彼らにとってはこんなにも苦しくて難しい事なのだと胸が痛みました。
苦しいことばかりで、未来への希望も見えなくて、それでも生きることを諦められない。彼らにとって、そして我々にとって『生きる』ってなんなんだろうか、とずっと考えていました。

そしてラストシーン。彼にとっては初めて生きることを認められ希望を持つことが許された。けれど、声を上げることも許されないまま人生を終えていく人がこの世にどれだけいるんでしょう。
どう受け取っていいのか分からなくて、ぐちゃぐちゃな感情のままエンドロールの間中ボロボロ泣いていました。これを他人事として同情の気持ちで泣いている自分の情けなさも含め。
観て良かった。
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