しゅん

存在のない子供たちのしゅんのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
3.0
貧困の皺寄せが子供に覆いかぶさるレバノンの物語。街を見下ろす上からの遠い視点と、少年ゼインとその周囲を真近で観るための近く低い眼の間で観客は自らの位置を彷徨わせ続ける。
遊園地のデカい人形の服を脱がして遊んでるゼインが同様にある種の現実を暴く話であり、それをいかに多くの人が共有可能なドラマに変換できるかの挑戦なのだと思う。近くも遠くもないミドルショット、ロングショットが少ないのはその目的に不適切だからだと感じたのだけどどうだろうか。リアリティの調節、と言い切ってしまっていいのかわからないけど。
反出生主義的なメッセージを持った法廷シーンと、対立する抱擁のシーンを並べているところが見事。ただ、モヤモヤする気持ちが残っており、それがなんなのかうまく言語にできない。強すぎるテーマから逃れられない映画は多分苦手なんだけど、もう少し違うなにかがあるような…。

子供が遊ぶディズニーのおもちゃと鏡に映して観る隣の家のアニメが印象に残る。歩こうとするヨナスをゼインが何度も振り返って戻っていくシークエンスが好き。
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