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イメージの本のあのレビュー・感想・評価

イメージの本(2018年製作の映画)
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まさしく本です。近年ゴダールが取り組んでいる映画形式の現代アート。あるいは現代アート的映画。それはファウンドフォトの手法を思い出させます。
内容は5つの章からなる20世紀の省察。イメージの破壊と脱構築。
芸術としての映画は終わった。それは何を与えられたのか?20世紀とは何だったのか?私たちの社会とは?考え続けなくてはならないことを思い出させます。
ゴダールは総括へと向かっていますね。これが遺言となるかも知れません。(授業を放棄しテニスして遊んでるとの噂なので、元気そうですが…)

わからない、理解不能という感想が目につきますが、社会学、哲学、現代美術史、ゴダールの文脈を高いレベルで理解していなければ、当然読むこと自体困難かも知れません。フレーム内ではあらゆる記号が装置として存在し、等価のものとして扱われます。それら頻出する記号、キーワードの概念について、選択された連続としての各シーン、あるいは台詞の意味作用を考えていくと少しでも読めると思います。エリート主義的ですが、過去を振り返れば現代の人々の教養水準が落ちているとゴダールは言いたげですね。彼はまさしく昭和の人です。そして、世界的な諸問題、とりわけその象徴としての戦争について積極的に言及する最後の世代となるでしょう。今や誰もが哲学に関して無知ですが、哲学書が簡単に読解し得ないように、この映画も簡単に読解し得る訳がないので、理解不能と突き放さずに勉強すると道が開けます。
あ