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ドッグマンのriverのレビュー・感想・評価

ドッグマン(2018年製作の映画)
3.8
どこまでも乾いて、寂しげなコッポラ村の風景が強く印象に残っている。イタリアのマフィア、カモッラの息がかかった実業家コッポラ兄弟が開発に関わったことからヴィラッジョ・コッポラと呼ばれ、一時は栄えたが今では人影もまばらで閑散としているコッポラ村。

そんな村に暮らしているが、マルチェロは満たされた男だ。犬と娘と友達が大好きで、トリミングサロン「DOGMAN」を営む。獰猛な大型犬にもアモーレと話しかけながら手なづけてしまう。また、娘と協力しながら、コンテストで結果を残すこともできる。仲間たちとテーブルを囲み、サッカーを楽しむ。しかし、善人とは言いがたい。時にコカインの売買や盗みの手伝い等も飄々とこなす。結構世渡り上手なのかもしれない。

そこに不吉な影を落とすのが、暴力の塊のようなシモーネの存在だ。めったにお目にかかれない凶暴な人間で、おまけにコカイン中毒でもある。手のつけられない傍若無人さには誰もがうんざりしている。捕まってもすぐに釈放されてしまうから、仲間内では殺しの計画までささやかれてしまう。

そんなシモーネだが、マルチェロは友達だと思っている。シモーネの要求はエスカレートしていくが、もしかしたらマルチェロは獰猛な大型犬を手懐けるように、シモーネもコントロールできると考えていたのかもしれない。

しかし、物語が進むほど、マルチェロはシモーネに否応なく呑み込まれてしまう。なんでそこでそんな決断をするんだとマルチェロに焦れったくなることが何度かあった。しかし、マルチェロの判断を誰が笑ったり蔑んだりできるだろうか。あの暴力がはびこるチリチリと乾いた村で、どれほどの人が正しい行いをすることができるだろうか。あのとき、マルチェロは何をすれば良かったのか?その答えをまだ見つけられない。
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