EDDIE

誰もがそれを知っているのEDDIEのレビュー・感想・評価

誰もがそれを知っている(2018年製作の映画)
4.4
これはミステリーではなく人間心理サスペンスだ。ムラ社会の妬み、恨み、様々な感情を笑顔の裏に隠す小さなコミュニティの人々の人間模様がホラーよりも怖い。

本作はペネロペ・クルス演じるラウラが、妹の結婚式で家族ともども故郷に戻ってくるところから始まります。
スペインならではの陽気なムードで進行する結婚パーティは、みんなが音楽に合わせ踊るお祭りムード。そんな最中、ラウラの最愛の娘イレーネが突如失踪。あとからラウラの携帯にメッセージが入り、誘拐されたことが明らかに。なぜ自分の娘が?何かのいたずらだろうと心底信じられないまま時ばかりが過ぎていきます。

正直これミステリーとして期待すると肩透かし食らうと思います。謎解き感もそんなにあるわけでもなし、彼らの抱える秘密(ここではあえて濁してこのような言い方にします)はある程度物語が進行したところで予想できちゃいますから。
ただですね、本作のタイトルにもなっている「誰もがそれを知っている」。これの本当の意味を知った時、この小さなムラ社会の抱える問題をイヤでも感じてしまいます。
ラウラやパコ(ハビエル・バルデム)、イレーネを見つめる視線の本心。それはあまりにも冷たいもの。彼らには直接は笑顔で明るく接しますが、心のうちで何を思っているかはわかりません。
事件が難航し、犯人探しや身代金問題など、様々な課題に直面するたびに浮き彫りになる町の住人たちの本心。パコもまるで町の良心のような存在であるにも関わらず、町のみんなはそうは見ていなかったりとか、もうとにかく人間の考えってホントに恐ろしいなと。

実生活で夫婦であるペネロペとハビエルですが、この2人の演技力たるや凄まじいものがありますね。物語自体は途中中だるみして退屈になるところもあるんですけど、彼らの演技で約2時間もってしまいます。
そして、イレーネを演じるカルラ・カンプラちゃんはかなりの美女なんですが、序盤のおてんば加減が鼻についてちょっとイライラしながら見てしまいます。それが誘拐後の怯えた表情や焦燥感、まるで別人のような演技を見事披露してくれて、とても印象的な女優さんでした。

この田舎の小さな村において秘密なんてものは存在しない。そう感じさせられました。そして噂は一人歩きして、村中に知れ渡るのです。
今回の事件のことも大きく表沙汰にはなっていません。警察に知らせると娘を殺すと脅されていたこともあり、家族、親戚など近しい人たちだけで動いていたからです。だけど、この事件のこともラストシーンがまるでそれを象徴しているかのようでしたが、結果的にこれも秘密として墓場まで持っていけるわけではなく、そのうち一気に村中に広まり、いつもの表では笑顔で、裏では違う感情を持って過ごす恐ろしいムラ社会がどんどん形成されていくのでしょう。
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