たわらさん

アップグレードのたわらさんのレビュー・感想・評価

アップグレード(2018年製作の映画)
4.4
良くない寄生獣。当の本人が困惑するほどの惨い手捌きで圧倒していくブラックなバディものとして単純に面白い。その主従関係または同等な存在として活用していたはずのAIに頭をすり替えられてしまうのはやり尽くされた内容ではあるかもしれないが、やはり衝撃的である。人とAIの差別化はできるが、AIが人の情を刺激すること、特定の選択へと促して個人を破壊することは決して難儀なことではない。

本作の魅力は10年後くらいの未来はこうなっているかもしれないという現代寄りのSFである。歴代の大作SFは背景にCGを多用して盛大な世界観を表現してきたが、この低予算ならではの演出が功を奏する。『攻殻機動隊』や『コブラ』の世界を彷彿とさせる小道具やサイボーグ、デジタルとアナログの相違に触れているのもリアリティラインを上げている。

『SAW』のリー・ワネルによるどんでん返しに引っ張られて期待し過ぎると肩透かしを食らうため、先入観が無い方が楽しめる。低予算ながらSFやサスペンス、ホラー、戦闘+カーアクションと満遍ないのも感心する。気になる点としては無能な銭形警部はもはやストーカーなので彼女の功績が欲しかったのと、なんだかんだオチと過程の整合性が少し粗いことでしょうか。
たわらさん

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