りっく

アップグレードのりっくのレビュー・感想・評価

アップグレード(2018年製作の映画)
3.8
AIが日常生活の利便性を向上させている近未来で、AIの安全神話が崩壊することによる悲劇、その事件の真相を追う下半身付随の主人公と彼に内蔵されたAIとのバディバイオレンスアクション、そして黒幕だと思われていた人間や世界が既にAIに侵略支配されていたことが明るみに出るラストまで一気に畳み掛けてみせる。

AIとのバディムービーは、ヴェノムや寄生獣を連想させるライトな掛け合いが繰り広げられるものの、主導権を譲渡されることでご主人のピンチをお助けするAIの容赦なき暴力描写にドン引く。ここで、あえて画面や編集をカクカクさせることで、人間ではない者としての異物感や違和感を画面上でフレッシュに演出してみせる。

また、物語の全貌が分かったところで、人間側が主導権を奪還するためにAIと戦うといったマトリックス的な二項対立には着地せず、夢見心地な人間たちには捏造された夢の光景を見させておきつつ、結局その世界は終わることなく、さらに現代と地続きであるスリリングな幕引きに痺れる。

哲学的なテーマに踏み込みながら、小難しさよりもエンターテイメントとしての面白さを重視し、終始テンポを落とさないリーワネル舵取りが頼もしい。
りっく

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