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アメリカン・アニマルズのとぽとぽのレビュー・感想・評価

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
4.0
《アイデンティティークライシス》アメリカの動物それは若気の至りーーーー幾重にもなった深いテーマを画期的手法を持ってして見事に捌いている意欲作で上質な犯罪スリラー。冒頭でも引用されるダーウィンの本や、楽観的観測から欠陥だらけの計画で犯行に至る彼等の動物的衝動等様々な意味合いが含まれた深いタイトルが示す通りの作品だった。そして、「ケンタッキーの洞窟」とはまさしく今日における郊外のことで、そこは特に都会ほどの娯楽も刺激もない普通の場所。そこではこれといった《問題が無い》ことが問題で、この競争社会では誰もが普通以上の特別になる事を求め(られ)ている。例えば実質本作の主人公的役割を果たすスペンサーはアートの才能に恵まれながらも、この何不自由ない生活や皆と同じ人生経験だけじゃ偉大なアーティストになれないのでは?とワケも分からず焦燥に駆られている。そして車を走らせて12時間という事からも作中では言及無いにしても911テロからもある程度は切り離されていたのかも。実際の人々を冒頭からさらっと出してしまうという尖った演出が随所に見られるのはバート・レイトン監督がドキュメンタリー監督であるからに他ならない。カメラの前にマジックミラーを置いて、インタビュー対象とインタビュアーである監督はカーテンを挟みながらも、インタビュー対象はカメラの前のミラーに映る監督を見て話すことでまるで観客に語りかけるように喋ってしまうという見事な手腕で次々と心情を吐露させてしまう。だからこそ可能にしたフィクションとドキュメンタリーの折衷まさしくハイブリッド!新たなストーリーテリングがスタイリッシュかつテンポ良くて胸踊る。けど実話モノだけあって勿論カタルシスで終わるわけは無い、《被害者》B.J.もいるのだから。犯行シーンは目を逸らしたくなりもする。その瞬間に映画のファンタジーの世界からブルーな現実に引き戻される力強さったら舌を巻くしスクリーンに釘付け。溺愛してきた息子がある日突然強盗犯で捕まった聞かされた時の親の落胆といったら想像以上だろう。同じティーンや若者の強盗にまつわる実話の映画化で思い出された『ブリングリング』とは雲泥の差で深層真意に迫っているような味わい深さと余韻。実話2004年から映画2018年、ブッシュからトランプ。今、これも意味があるのかな?それとも結果たまたまそうなったのか?聞けずに終わってしまった試写会、これだけが心残りだ。

GETAWAY HEIST

P.S.映画秘宝の編集長、自分の事を記者だか何だかと括っていたけど、始終インタビュー対象にあたる監督の方に向けて脚を投げ出す形で組んでいるのは如何なものかと思った。確かに海外のトーク番組でも何でもグローバルな視点で見たら珍しくも無いのかもしれないし、監督もそれを特段不快に思っていなかったのかもしれないけど、同じ日本人としては恥ずかしい。しかも的外れな事ばっかり言っているし。

↓鑑賞前期待コメント
見るか、見ないか...失禁しそうなほど見たいから、です。いつの日か後悔したくないんです、「あの時試写会に行けていれば人生違っていたはずだ」なんて。小学生のときに見てからシリーズ全作それぞれ100回以上は見ている『オーシャンズ11』、中学生のときにジャケ買いしてそのスタイリッシュな語り口にメロメロになった英国ギャング映画の至宝『スナッチ snatch』、そしてタランティーノの中でいつまで経ってもトップレベルに好きな『レザボア・ドッグス』。そんなスタイルから入って真似したくなるようなとことんスマートな語り口たちの犯罪(強盗)映画を彷彿とさせるような、そして実際に見て計画の参考にした高校生達の実話なんて僕への接待かと思うレベルです。キャストも注目の若手揃い踏みで、特に主演のバリー・コーガン君は『聖なる鹿殺し』での汚ねぇパスタの食い方が忘れられません。それくらいの鮮烈さを今回も期待してしまうのは間違いでしょうか?見るか、見ないか、見るか、見ないか...見るに決まってるでしょ!ーーーー『オーシャンズ8』を見て「やっぱり前回までと違う!」となった人も、『アラジン』の予告を見て「ガイ・リッチーそれで良いのか!」となった人も、最近のタランティーノ映画を見て「これはこれで最高だけど、また初期みたいなギャング映画も!」となった人も皆まとめて見るべし!去年からずっと見たかった作品!!
2019年42本目(たぶん)
TOMATOMETER88 AUDIENCE81
American Animals tangles with a number of weighty themes, but never at the expense of delivering a queasily compelling true crime thriller.
Richard Roeper & Peter Travers 3/4
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