浅野公喜

アメリカン・バイオレンスの浅野公喜のレビュー・感想・評価

アメリカン・バイオレンス(1981年製作の映画)
3.5
80年代に作られた日米合作のアメリカにおける銃社会や犯罪・殺人事件について取り上げたドキュメンタリー。製作・脚本には「タクシードライバー」のポール・シュレイダーの弟で「太陽を盗んだ男」の原案・脚本にも関わったレナード・シュレイダーで、製作には最近ガーシー(ヨシカズ・ヒガシタニ)が批判していることで話題の(?)マタイチロウ・ヤマモト(!)の名前が。

ジョン・F・ケネディやジョン・レノンの暗殺、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」をはじめ映画の題材にもなりやすいチャールズ・マンソンにテッド・バンディ、ジョン・ゲイシー等については割と有名ですしネットでも容易に動画を観れる現在では既視感も。しかし信者の集団自殺を招いたキリスト教系カルトの教祖ジム・ジョーンズ、30人近くの少年を誘拐強姦拷問そして殺害、結果彼に友人達を紹介していたエルマー・ウェイン・ヘンリーによって銃殺されたディーン・コール等今まで知らなかった強烈な容疑者達や観た事が無かった事件の映像も幾つか有り、誰でも容易に命を奪える銃社会含め「病んだアメリカ」を浮き彫りにしています。今作から40年近く経ちますが、今のアメリカを見ると未だに今作が「新鮮」あるいは「時代」を感じさせる事は有りません。

銃社会に関しては批判も多いですが、今作序盤のナレーションの「アメリカ人は言う。銃を持つなって?銃が有るから女子供でも力が無くったって皆平等なんじゃないか。引き金を引くのに力は要らないからね」という言葉が凄く印象的でした。銃で起こる犯罪は否定しますが、個人的には銃によって与えられる平等性に対しては肯定的で、銃によって守られたケースも有るのではないか、と考えた次第です。
浅野公喜

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